人事・労務 - 問題社員対応、解雇・雇止め

協調性の欠如を理由とする解雇配置転換で長所伸展する

協調性の欠如の問題点

企業は多数の労働者を雇用し、これを組織として生かしていかなければなりません。したがって、労働者を組織の中に組み込み、各労働者が互いに協力して業務を遂行する、こういった有機一体となった組織があってこそ企業は成り立ちます。

企業がこういった存在である以上、労働者には他の労働者と協調して円滑に労務を提供する義務があり、協調性の欠如は、労働者の基本的資質が欠如していることにもなりますし、協調性を欠いた行動は、会社に対する義務違反になります。

協調性のない社員への対応

協調性がないというのはどういう人でしょう。社内には「身勝手な行動が目に付く。」「上司に対しても反抗的。」「人の意見を聞かない。」「空気が読めない」と言われている人がいると思います、こうした人を指して「協調性がない」というのでしょうが、こうした社員を指導する立場の管理職は、こういった感覚的な部分でその社員をとらえるのではなく、その社員のいかなる行動が、企業秩序・事業遂行上どのような問題を引き起こしているかを具体的に捉えて指導する必要があります。

指導するについても、そうした個々の問題行動を指摘し、その問題点に気づかせ、改善意欲を引き出す必要があります。また、弁明の機会を付与(特に処分時、譴責処分でも十分有効)することも重要です。弁明しなければ、警告・処分の正当性を認めたことになりますし、不合理な弁明に終始する等反省がなければ、その点も後で処分をするのに有利な材料となります。

協調性がないことを理由に解雇したが、裁判になって、改善の可能性がないとは言えず、解雇は無効と判断されたという事案が良くあります。これは、こうした指導がなされておらず、裁判所から「やるべき指導もしないで、改善の可能性がないとはいえないでしょう」と考えらてしまっているのです。

裁判所は、こうした協調性がない社員に対する解雇の有効性が争われる事件で、その社員にどんな問題行動があったかを、会社が主張する事実でしか知ることができません。ところが会社が主張する問題行動が、抽象的な表現でしか述べられていないと、その行動が企業秩序・業務遂行にどのように影響するのか、問題行動の逸脱の程度がどれほどのものなのかが分かりませんし、そもそもそういう表現しかできないこと自体、ちゃんとした指導が行われているのかという疑問も生じます。

また、会社が問題行動を5W1Hに沿って、具体的に述べたとしても、時系列通り、羅列的に主張し、よって当該社員の協調性の欠如は重大かつ明らかであり、改善の余地がないといっただけでは、裁判所は聞く耳をもってくれません。当該社員にはこういう行動が求められていたにもかかわらず→こういう行動をし→会社にとってはこういう悪影響が及ぶため→それを自覚させるべくこういう指導をしたが→本人は逆に不合理な弁解を繰りかえすだけで反省がなく→再度こういう問題行動を起こしたので→上司がこういう指導をし、というストーリーが必要なのです。こういう、時系列に沿ったストーリーが具体的に示されて初めて、裁判所は「会社も、そこまで一生懸命やったのに、こういう改善結果しか得られなかったとしたら、解雇になっても仕方がない」と言ってくれるのです。

弁護士は料理人に例えれば、いい素材があって初めていい料理ができます。素材が悪ければ、それなりに味付け、盛り付けを工夫しますが、裁判官はいわばグルメですから、素材の悪さを見透かされてしまいます。

軽い処分を経る必要

問題行動がどれだけ重なっても、いきなり解雇ということでは、解雇の有効性も疑われます。普通解雇にしても懲戒解雇にしても、その前に、軽い処分がなされなかったかが問題となります。懲戒処分として、軽い順からいくと、譴責(けんせき)→出勤停止→減給→解雇という順になるでしょう。会社としては、最低でも譴責処分くらいはしておかないと、社員に十分警告を与えたことにはなりません。逆に、会社から前にも譴責処分等の懲戒処分を受けたにもかかわらず、改善しなかったということで、改善の不可能性を示す事実にもなります。

仮に譴責処分しかしていなかったとしても、その際に、今度やったら解雇することも考えるとか、そういった警告を行ったかとか、反省文を書かせたとか、社員の側に「今度また同じことをやったら解雇になるかもしれない。」と思わせることが重要です。外堀を埋め、内堀を埋め、最後は本丸を攻めるといった手順を踏むことで、解雇するまでもなく、退職勧奨の結果、退職となる可能性が高まりますし、裁判になっても、ここまで会社から警告を受けていながら、なおかつ同じことをやったのだから改善の可能性がないと思ってもらえるのです。

降格・配転

ある程度の規模の会社だと、裁判官から、降格又は配転があったかどうかが問われることがよくあります。配転先でも問題を起こせば、管理職や同僚に問題はなく、その社員自身に問題があることが明らかになります。「相手代われど、主変らず」とことわざにもある通りです。降格することにより反省を促すという方法もあるため、降格したかどうかも重要です。

ただ、規模の小さい会社だと、降格も配転もしようがありませから、こうしたことが求められるのはある程度規模の大きい会社に限られます。

中間管理職のフォロー

問題行動をとる社員は、その行動パターンがモラハラ的であったり、注意しても威圧的な態度をとったりすることが往々にしてあります。そのため、上司の心理的負担も大変なものがあります。

こうした心理的負担を軽くするためにも、その直属の上司も相談になるとか、あるいは、人事部を通じて注意してもらうとかいったフォローが必要です。こうしたフォローがないと上司も指導を避けることになりかねません。

証拠を残す

問題行動があった場合、問題行動の内容を5W1Hの形で記録してください。これに対する指導があれば、その指導の内容、指導に対する本人の弁解及び反省の有無も記録してください。取引先とのトラブルの場合、当該トラブルの内容を、取引先のだれが、いつ、どういった方法で報告したかも記録しておけば、その信用性が増します。こうした記録自体は、作成者が嘘を書こうと思えば書けなくないのですが、裁判所は事件当時に作成された書面は無条件で信用するところがあるので、非常に重要なのです。

こうした、問題行動とそれに対する指導のやりとりが、LINEでなされることが多いですが、関連するやり取りがあれば、その画面を撮影して記録として残しておいてください。

退職勧奨

退職勧奨する際は、人事権限がある人間に同席してもらって、退職願が出されたらその場で受理できる体制を整えておくといいでしょう。

やりとりについては必ず録音しておいてください。最近は社員の方が積極的に会社とのやり取りを録音して証拠かしていることが多く、会社もその対抗上録音する必要があります。敢えて、その場で録音の許可を求める必要はありません。

解雇の効力を争う訴訟で主張すべき事実

今まで述べたことのほかに、こういった訴訟では、業界や担当部署の特長も主張する必要があります。業界では通常求められる当たり前のことも、裁判所には分かりにくいことがあります。また、当該部署がチームワークが重要な職種であれば、協調性も強く求められるため、協調性の欠如を主張する側に有利になります。また、ちょっとのミスが取り返しのつかない職種であれば、その点も強調すべきでしょう。

問題社員対応には弁護士のサポートが必要です

問題社員の対応を怠ってしまうと、問題社員との関係はもちろんですが、最大の問題は、周囲の社員のモチベーションを下げ、労働生産性を下げてしまうリスクばかりでなく、最悪の場合、会社に嫌気がさして辞めてしまうという可能性があることです。

多くの経営者は、なんとかしたい、ただ、対応するエネルギーがない、法律的にどういった対応がベストなのかわからない。といった悩みを抱えているのではないでしょうか。

問題社員の対応は、注意指導、配置転換・降格、懲戒処分、退職勧奨、解雇など法律的に適切なプロセスを踏んで対応していかなければなりません。その対応を間違えれば、企業にとって大きなリスクになります。そのため、人事労務問題を熟知した弁護士のサポートが必要なのです。

当事務所では、労働問題に特化した顧問契約をご用意しております。法改正対策はもちろん、労働時間管理やフレックスタイムの導入や、問題社員対応、人材定着のための人事制度構築など、企業に寄り添った顧問弁護士を是非ご活用ください。

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