人事・労務 - 残業代請求・未払い賃金

残業代請求と予防法務就業規則、勤怠管理で注意すべきこと

「残業代請求を起こされないよう、何をやっておくべきか」

「タイムカードがないことで、何か問題が起きないか」

「だらだら残業を防ぎたいが、どうしたらいい」

「みなし残業制度を取っている場合、注意することはないか」

就業規則

労働時間等について、就業規則が整備されているかどうかも重要ですが、作成しただけでは十分でなく、それを全従業員に公表して初めてその効力が発生します。したがって、労働基準法では就業規則を作成した場合、事業主にその周知義務を課しています。周知する方法としては、休憩室、食堂等社員が見やすい場所に備え付けるか、または各社員に配布するほか、パソコンを通していつでもどこでも見られるようにしてあれば、それでもよいとされています。

タイムカード

労働時間についてはタイムカード等で管理する体制をとっていない場合、裁判で、従業員の個人的なメモをもとにした残業代支払が認められてしまうことがありますので、タイムカード等により、客観的な時間管理を心掛ける必要があります。

交渉記録の保存

最近は、会社の指示や、労働者との交渉がメールを通じて行われ、それが重要証拠となることが多くなっています。
ただ、こういう重要な証拠であるにもかかわらず、いざ証拠に使おうとすると、当時のパソコンを廃棄していたとか、パソコンが壊れてデータが取り出せないなどということがよくあります。
原始的ではありますが、こうした記録は、紙にプリントアウトして保存する対策も必要です。

36協定(さぶろくきょうてい)

36協定を結ぶことなく、従業員を法定労働時間以上働かせた場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
36協定には有効期間があります。法律上は最長3年となっていますが、労基署の指導もあって通常1年となっているのが普通です。自動更新される旨を定めている会社が多いですが、自動更新であっても、更新あるごとに、労使の何れからも異議がなかったことの届出を労働基準監督署にする必要があります。

特別条項付の36協定

決算業務や季節的に繁忙期が存在するなど、一時的に36協定で定めた時間を超えてしまうことが予想される場合は、「特別条項付の36協定」を締結しておくと良いでしょう。また、36協定については「時間外労働の限度に関する基準」というものが定められており、36協定による時間外労働の限度時間を定めているため、これを回避するためにも特別条項が必要になります。

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就業規則で残業命令を定めておく必要

就業規則の中に、会社が残業を命ずることができる旨規定しておくことも忘れないでください。そうしないと残業命令に従わない従業員を処分することができません。

だらだら残業を防ぐ手立て

残業自己申告制を定め、従業員が時間外労働を行う理由及びその時間を所属長に申告し、事前または事後に所属長の承認を得るよう就業規則で定めることも必要です。
早出についても、時間管理を徹底しないと、その分の残業代を請求される可能性があるので注意してください。

みなし残業手当

みなし残業を採用する場合、定額払いのうち割増賃金部分がいくらなのかを就業規則に定める必要があります。例えば「32万円の給与のうち、45時間分の残業代として7万円が含まれる」といった具合です。
給与明細でも、基本給部分とみなし残業代部分を区別したり、みなし残業代とは別に残業代を支払うなど、運用も適正に行われていないと、裁判でみなし残業を認めてもらえない可能性がありますので注意してください。
営業社員に直行直帰を許している場合、就業規則で事業外労働についてのみなし時間制度を設ける必要があります。

ボーナスで配慮の主張は通らない

零細企業の場合、時間外で働いてくれる社員を優遇するため、給与ではなく、賞与を積み増すことで対応していることがあります。しかし、賞与の積み増しは一切配慮されず、毎月の給与をもとに割増賃金を計算されます。賞与を積み増しても、お金を捨てるのと同じです。

管理監督者

管理職から残業代を請求された場合、会社側からはよく「労働基準法上の管理監督者に該当するので、残業代の請求は認められない」と主張が行われます。
労働基準法上、「管理監督者」は、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けず、残業代も発生しません。しかし、労働基準法上、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について「経営者と一体的な立場」にある者をいい、中間管理職と呼ばれる立場の労働者を「管理監督者」と認めてもらうことは容易ではありません。
経営者と一体的立場にあるかどうかは、職務内容及び責任と権限、勤務態様、賃金といった点から、判断されます。
職務内容及び責任と権限の面で言うと、採用・解雇・人事評価・時間管理について独立した権限を持っていることが必要です。また、遅刻、早退等をした場合に減給され、又は、タイムカードの打刻を強制されたり、シフトに欠員が生じた場合他の従業員の仕事を代わって行ったり、マニュアルに従った勤務をさせられていれば、勤務態様上、管理監督者とはいえないことになります。また、給与も上がったが、長時間労働の結果、時間給換算すれば、従業員時代と変わりがないという場合は、給与面で管理監督者としての待遇を与えられていないということになるでしょう。

最近、残業代請求の訴訟が激増しています。残業代請求があってから、前からこうしていれば、あの時ああしていれば、ということでは遅すぎます。日ごろから、就業規則等を整備するだけでなく、勤怠管理が適正に行われていないと、それが残業代に大きな影響を及ぼします。顧問弁護士の存在が残業代対策に大きく影響します。

労務管理には弁護士のサポートが必要です

労務管理を行うためには、多岐にわたる法律に知っておく必要であり、昨今、労働法規は、法改正が立て続けに行われています。法律を「知らなかった」「きちんと運用出来ていると思っていた」では済まされず、特に、残業代請求に対する対応は、その運用を間違えれば、数百万円単位の支払いを求められ、企業にとって大きなリスクになります。そのため、労働問題を熟知した弁護士のサポートを受けながら、制度を構築・運用していくことをお勧めします。

当事務所では、労働問題に特化した顧問契約をご用意しております。経営に専念できる環境整備はもちろんですが、予防法務、制度構築運用など、企業に寄り添った顧問弁護士を是非ご活用ください。

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