人事・労務 - 残業代請求・未払い賃金

残業代未払いに対するペナルティ本当に怖い残業代請求の実態

労働者から未払残業代を請求される会社の多くは、残業代を払っていないという認識がなく、残業代を支払っていないことに対する悪意があるわけではなりません。悪質な残業代未払いをしている会社もあるかもしれませんが、それはごく一部にすぎないと思います。

ただ、法の不知を理由として、残業代の未払いが正当化されることにはならないのです。残業代の未払いに対しては、重いペナルティが定められており、仮に残業代を払いたくても払えないとしても、未払いの事実をもって、法律違反として容赦なく責任を負わされることになりかねないのです。

残業代未払いのペナルティとしては、(1)付加金(2)遅延損害金(3)刑事罰の3つがあります。

(1)付加金

付加金とは、未払残業代の支払とは別に、未払残業代と同額の支払を課せられる制裁金のことを言います。時間外・休日・深夜労働の割増賃金(労基法37条)の支払義務に違反した場合、裁判所は、労働者の請求により、使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命じることができます(労基法114条)。

例えば、未払残業代金が500万円あった場合、会社はその倍額の1000万円の支払義務を負うということになります。会社にとって非常に大きな損失となってしまいます。

もっとも、この付加金支払義務は、裁判所の命令があって初めて発生するものです。つまり、付加金が命じられるのは裁判になったときだけです。労基法違反があるからといって当然に発生するものではないですし、労働者が使用者に対し請求して発生するものでもありません。裁判所が、使用者の労基法違反の程度・態様、労働者の不利益の内容・性質等の様々な事情を考慮して、付加金支払を命じるか決めることになります。

(2)遅延損害金

残業代は、賃金であることに変わりはなく、労働者の雇用契約に基づく労務提供義務に対する対価であるため、会社が、残業代を支払わないことは、債務不履行(民法415条)となり、遅延損害金が発生します

賃金支払債務を遅延する場合の遅延損害金の利率は、通常6%です(商法514条。ただし、令和2年4月1日から民法と同じ利率となります。)。

しかし、退職労働者の場合には、遅延利息が年14.6%となります(賃金支払確保に関する法律6条1項)。そのため、退職後の労働者については、退職日の翌日から未払賃金の額に年14.6%もの遅延損害金がついてしまうのです。未払残業代請求の多くは、退職者によるものが多いため、会社として注意が必要です。

つまり、退職者による未払残業代請求事件が、長期化してしまうとその分遅延損害金も増えることになります。労働審判では3回の期日(実質2回で終わることが多い。)で終了することになっているので、そこまで長期化することにはなりませんが、訴訟まで行くことになると長期化は必須です。そのため、遅延損害金を軽視しないでもらいたいところです。

(3)刑事罰

労基法は117条から120条で、労基法違反に対する刑事罰を定めています。そのため、残業代未払には犯罪が成立し、刑事罰を科せられる可能性があるのです。著しく悪質な態様で残業代を支払わなかったり、帳簿やデータの改ざんをしたりした場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられかねません(労基法119条、37条)。

実際に刑事罰まで科せられることは多くはありませんが、刑事罰を科せられた例がないわけではない以上、未払残業代の事実が発覚した場合には、速やかに是正するなどリスク回避も重要となってきます。

このように未払残業代に対するペナルティは、会社にとって非常に負担が大きいものばかりです。時には、会社のイメージダウンにつながることだってありえます。未払残業代を発生させないように日ごろからしておくことはもちろんですが、未払残業代を請求された場合にも、迅速かつ適切に対応をすることがとても重要になってきます。

特に、未払残業代の場合、労働時間をタイムカードなどの客観的資料から一つ一つ丁寧に確認して行く作業がタイトなスケジュールの中で要求されることもしばしばあるため、専門家である弁護士にご相談いだければと思います。

労務管理には弁護士のサポートが必要です

労務管理を行うためには、多岐にわたる法律に知っておく必要であり、昨今、労働法規は、法改正が立て続けに行われています。法律を「知らなかった」「きちんと運用出来ていると思っていた」では済まされず、特に、残業代請求に対する対応は、その運用を間違えれば、数百万円単位の支払いを求められ、企業にとって大きなリスクになります。そのため、労働問題を熟知した弁護士のサポートを受けながら、制度を構築・運用していくことをお勧めします。

当事務所では、労働問題に特化した顧問契約をご用意しております。経営に専念できる環境整備はもちろんですが、予防法務、制度構築運用など、企業に寄り添った顧問弁護士を是非ご活用ください。

WEB相談申込

残業代対応の予備知識 メニュー

残業代請求対応方法について メニュー

人事・労務 メニュー