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安全配慮義務(場合分けの検討) 会社が訴えられるケースと対応法
以下、(1)従業員自ら罹患した場合、(2)従業員の同居家族が罹患した場合、(3)従業員が新型コロナウイルス感染症の流行地域から帰国した場合、従業員が新型コロナウイルス感染症流行地域からの入国者と接触があった場合、に分けて検討します。
(1)従業員自ら罹患した場合
従業員が自ら新型コロナウイルス感染症に罹患した場合には、その旨を自己申告させ、自宅待機させることは必要かつ合理的といえます。
(2)従業員の同居家族が罹患した場合
同居の家族が罹患した場合は、従業員は濃厚接触者(新型コロナウイルス感染症が疑われる者と同居あるいは長時間の接触[社内、航空機等を含む]があったもの)であり、上記(1)の従業員が罹患した場合と同様に、感染リスクが高いといえますので、その旨を自己申告させ、自宅待機させることは必要かつ合理的であるといえます。
当該従業員が、以下の場合にあてはまるときは、帰国者・接触者相談センターに相談するよう命じてください。
- 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
- 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合
但し、高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など))がある人や透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている人は次の場合
- 風邪の症状や37.5度以上の発熱が2日程度続く場合
- 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合
(3)従業員が新型コロナウイルス感染症の流行地域から帰国した場合、帰国者と接触した場合
この場合も、(2)と同様、所定の場合は帰国者・接触者相談センターに相談するよう命じ、就業制限を受けなかった場合も(2)と同様に扱うべきでしょう。
以上、場合分けして、使用者の果たすべき措置を記載しました。新型コロナウイルスの感染期に十分な感染対策を行わずに社内で感染者が出た場合、(安全配慮義務違反と罹患との因果関係の立証責任は従業員側にあるものの、)安全配慮義務を問われ損害賠償に発展することもありえます。
そのほか、ご相談のあった事例として、「本⼈や家族が感染した疑いがある場合には連絡してください」ということにしていますが、より詳細に健康状態を把握するため、例えば、連絡を敢えてしなかった従業員に対して懲戒は可能なのかというものがありました。
この点について、「本⼈および同居の家族の感染および感染疑い」について報告を求めることは、他の従業員に対する安全配慮義務を履⾏するために合理的かつ有益であるから、当該業務命令は、有効であると考えられます(但し、適切な情報管理は必要)。
あらかじめ就業規則で⼿当をされていれば、それは有効なものと考えられます。
一方、家族を含めた「健康状態全般」などの情報は、プライバシー権として保護されるべき私的な情報であり、従業員の任意の協⼒により⼊⼿することとすべきと考えられます。したがって、敢えて報告をしなかったとしても懲戒はできません。
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