団体交渉、労働組合対策

団体交渉を申し入れられたら団体交渉拒否と言われないよう、早急に回答書を送りましょう

団体交渉申入書がスタートの合図

労働組合は、団体交渉を開始するについて、団体交渉申入書を会社に送ってきます。ユニオンの場合、団体交渉申入書とともに、労働組合加入通知書という書面を送ってきます。書面には、「貴社社員●が、当労働組合に組合へ加入したことを通知致します。」と書かれています。

回答書

団体交渉拒否と言われないよう、早急に回答書を送りましょう。組合から一方的に日時を指定してきても、それに応じる必要はありません。社内で検討の上、日時、場所を指定することと、要求事項に対して回答する旨の書面を送れば十分です。

日時の指定

会社としても団交に対する準備の時間が必要ですし、出席者の日程調整の都合もあります。弁護士を同席させるとしたら、弁護士との時間調整も必要になります。しかし、余りに長期間を置くことは、誠実交渉義務違反となります。通常は1~2週間後くらいの日を指定すべきでしょう。

少なくとも初回は、就業時間外を指定することが適切でしょう。最初から就業時間内に行うと、次回以降も必ず就業時間内に行えということを強硬に申し入れてくることが往々にしてあるからです。就業時間内の時間を指定する場合も、今回は就業時間内に行うが、今後も就業時間内に行うことを約束するものではないと、一言添えた方が良いでしょう。

時間を指定することは可能ですが、1時間だと短すぎるとして、誠実交渉義務違反ありとして不当労働行為とされてしまいます。2時間程度が適切でしょう。

「交渉の時間は、交渉進展の如何にかかわらず、常に一定の時間で打ち切ろうとすることには無理があり、合理的な延長を必要とする場合もあることは明らかであるところ、原告主張の時間に関する条件については、右のような合理的な延長を容認するものであることを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、交渉の時間を常に2時間以内と制限し、交渉の進展如何にかかわらず、これを打ち切ろうとする原告主張の条件は、合理性を有しないものというべきである。」とした判例もあるので、注意が必要です。

場所の指定

中には組合から組合事務所を指定してくることもありますが、通常は会社内での団体交渉を要求してくることが多いでしょう。ただ、会社だと、いざ交渉を打ち切ろうとしても、居座れる恐れがあります。また、他の従業員に対するマイナスの影響がありますし、店舗の場合、売り上げや店の信用にも関わります。ただ、会社から離れた場所だと、従業員としても交通的に不便ということもあるので、会社の近くにすべきでしょう。

団交前に2通目の回答書を送付すること

最初の回答書は団体交渉に応じるが、日時については改めて連絡するといっただけの内容のもののため、団交前に最終的な回答書を送る必要があります。団体交渉申入書には、協議事項が記載されているのが普通です。回答書には、協議事項に対する会社側の主張を記載した方が良いでしょう。誠実に対応したことの証拠にもなりますし、会社側の交渉担当者に対して基本方針を明確に示すことにも役立ちます。

出席者の選定

組合が代表者を出席させろといってくることもよくありますが、交渉権限を持っている人間を指定するのであれば、必ずしも代表者自ら出席する必要はありません。社長がいると、その場で決断を求められるため、却って害が多いでしょう。団体交渉は向うの方が慣れており、その場の駆け引きで協議がなされると、組合の思うままに進みかねません。ある程度議論が煮詰まった段階で、社内で検討するのでというワンクッションがあった方が安全です。人事部長、直属の上司を出席させるのがよいでしょう。

さらに弁護士を代理人として参加させることも可能です。特に、解雇事案であったり、組合が戦闘的であったりする場合は、弁護士を同席させる必要があるでしょう。組合が難色を示すこともありますが、「そちらは団体交渉のプロでしょうが、私たちには経験がないですし、法的な立場から会社の言い分を申し上げる必要がありますから」といって押し切りましょう。そして「当方は、人事部長、直属の上司及び弁護士の合計3名で対応しますので、そちらも交渉担当者は3 名までとしてください。」と、相手方の人数も制限した方がいいでしょう。大勢で来られては、つるし上げられるような雰囲気になりかねません。

しかし、最終的な詰めの段階で、社長がいれば話がつくのにという場合は、社長が立ち会う方が良いでしょう。この点は、ビジネスの交渉と同じです。組合が、特定の事柄にこだわり、協議がまとまらないことが明らかという場合に、会社としては拒絶する理由を明確に示せればいいのですから、社長が出る必要はありません。

会社が小規模で、社長がワンマンで全て決めているという会社の場合、役員が出ても社長の意向を忖度して逃げの回答しかできないということもあり、その場合誠実交渉義務違反となりかねません。その場合は社長が出るしかないでしょう。

要は、団体交渉は合意を形成するのが目的なのですから、合意を形成するのに必要なことはやってもいいですし、合意形成の妨げとなることをやるべきではないのです。

録音の用意

組合は必ず交渉の様子を録音しています。あらかじめ録音の用意をしておくべきでしょう。組合に録音をしないよう約束させても、録音されてしまえば、終わりです。約束に反して録音したからといって、裁判で証拠として出せなくなる訳ではないのです。「お互い、言った言わないがあってはいけないですから、お互いに録音をとるようにしましょう。」と言ってしまった方が良いでしょう。

団体交渉には弁護士のサポートが必要です

団体交渉を社労士の方に相談される経営者も多いと思いますが、一番の違いは、弁護士は、会社経営者の代理人となって、代わりに交渉することが出来るという点です。弁護士が代理人として積極的に関与することで、法的見地からしっかりと対応することが出来ます。

また、労働組合との団体交渉は、常に不当労働行為の危険と隣り合わせです。他にも、即座に対応を求められる場面があったり、継続的な団体交渉に発展する場合もあります。常日頃から、こういったリスクマネジメントをするため、顧問弁護士としてしっかりと弁護士のサポートを受けておくことが必要なのです。

当事務所では、労働問題に特化した顧問契約をご用意しております。法改正対策はもちろん、労働時間管理やフレックスタイムの導入や、問題社員対応、人材定着のための人事制度構築など、企業に寄り添った顧問弁護士を是非ご活用ください。

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