【B型肝炎】最高裁が請求権の起算点を判断 2021年05月12日

集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎にかかった方に対する国の給付金の額は、その症状の程度(死亡、肝がん、肝硬変、慢性肝炎、無症候性キャリア)や症状が発症した時(無症候性キャリアの方、については集団予防接種等の時)から20年が経過しているかどうかによって、変わります。

■「不法行為の時」から20年が経過していると、国に損害賠償する権利が消滅する



20年経過しているかどうかによって給付金の額が変わるのは、法律上、「不法行為の時」から20年を経過すると、「除斥期間」という制度により、国に損害賠償を請求する権利が消滅してしまうからです(民法724条2号)。つまり、本来であれば、「不法行為の時」から20年を経過してしまうと、一切請求できなくなってしまうのですが、集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎にかかった場合には、20年を経過していても、特別に国が給付金を支払うという法律(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法。以下「特措法」と言います)ができており、20年未満の場合よりも金額は少なくなりますが、給付金が支払われます。

さて、特措法では、上で述べたとおり、無症候性キャリアを除いては、肝がんなどの症状が発症した時を「不法行為の時」と捉え(これは、過去に最高裁判所が同様の判断をしているためです)、その時点から20年を経過しているかどうかによって、給付金の額を変えています。

■陽性時の慢性肝炎が20年を経過し、陰性後の慢性肝炎が20年以内の場合の争い



20年以上前に慢性肝炎(HBe抗原陽性慢性肝炎)を発症し、その後、HBe抗原陽性からHBe抗原陰性への転換(HBe抗原セロコンバージョン)を経て、肝炎が沈静化したものの、さらにその後に再燃し、20年以内に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を発症したというケースについて、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症により生じた損害の賠償を求めている裁判があります。
第一審は、HBe抗原陰性慢性肝炎の再発により、先行するHBe抗原陽性慢性肝炎による損害とは質的に異なる新たな損害が生じたと判断し、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症から20年を経過していないため、除斥期間は経過していないとしました。
他方、控訴審は、いずれの症状もB型肝炎ウイルスへの免疫反応であることに変わりはなく、質的に異なる新たな損害が生じたとは言えないと判断し、除斥期間が経過しているとしました。

この控訴審判決に対し、原告らが上告し、最高裁判所は、令和3年4月26日に判決を出しました。最高裁判所は、第一審判決同様、HBe抗原陽性慢性肝炎を発症したことによる損害と、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害とは、質的に異なるものであり、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害は、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時に発生したものというべきであると判断しました。そのため、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症から20年以内であれば、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害の賠償を求めることができることになります。三浦裁判官の補足意見では、特措法の枠組みに従って損害賠償請求をする場合も、本件と同様に考えるべきとされていますので、20年以上前にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症した方でも、20年以内にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症された場合には、より大きな額の給付金が支給されることになると考えられます。

(2021年9月15日追記)
なお、最高裁判所は、損害額を審理させるために事件を控訴審に差し戻していましたが、
令和3年9月3日、国が控訴を取り下げたため、損害賠償請求を認めた第一審判決が確定
しました。今後、同種の事案でどのような判断がされるか、また、新たな立法的解決がされるかが注目されます。

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