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- 「脱法ドラッグと罪刑法定主義」編
脱法ドラッグと罪刑法定主義
2014年5月13日に文化放送「くにまるジャパン」に出演した際に話した内容を掲載しています。 テーマは「脱法ドラッグと罪刑法定主義」についてです。
- パーソナリティ
- 今日は「脱法ドラッグ」にまつわるお話ですね。
- 弁護士
- 「脱法ドラッグ」は、麻薬や覚醒剤によく似た薬物を合成し、液体や粉末にして「合法ハーブ」や「アロマ」等の名称で盛り場の怪しげなお店などで販売するものです。
麻薬や覚醒剤の化学構造のほんの一部を変えているだけで、「禁止薬物ではない」として取引されていますが、危険性は麻薬や覚せい剤と同じなので、とても悪質な存在といえます。 - パーソナリティ
- なぜ取り締まることができないんでしょう?
- 弁護士
- 近代刑法の大原則として「罪刑法定主義」があります。
- パーソナリティ
- 法学部に入ると一番最初に勉強するあれですね。内容は忘れてしまいましたけど…。
- 弁護士
- 「どんな行為が犯罪となるか」その行為に対して「どんな刑罰が科せられるか」は、法律によってのみ定められるという原則です。つまり、条文に「この行為が犯罪ですよ」と予め書いてなければ規制できないのです。
- パーソナリティ
- なぜそういう原則があるのでしょう?
- 弁護士
- 理由は2つあります。
まず、どんな行為が犯罪に当たるかを国民に知らせることで、それ以外の活動は自由であることを保障しています。
きちんと法律で「これが犯罪です」と定められていないと、実際は大丈夫なことでも「これって犯罪かな?」と懸念して必要以上に行動が狭められてしまうこともありますよね。 - パーソナリティ
- もう1つの理由は?
- 弁護士
- 民主主義の観点から、犯罪は法律で定める必要があります。何を罪として、それに対しどんな刑を科すかについては、国民の代表者で組織される国会が法律で定めるわけです。
つまり、そこには国民の意思が反映されていることになります。 - パーソナリティ
- 立法府と言われるくらいだから、国会を通して、国民が決めているわけですね。
- 弁護士
- はい。仮に法律以外の方法で「これは犯罪だ」と決められたらどうでしょう? 権力者や、その時々の政府が、自分に都合のいいルールを作れますよね。そこで「罪刑法定主義」が重要な原則になるというわけです。
- パーソナリティ
- 薬物に関してもその原則が適用されるということですね。
- 弁護士
- そうなんです。では、脱法ドラッグをどう規制しているかというと、禁止薬物を法律で一つ一つ「指定」しています。指定薬物は、一昨年までは約90種類でしたが、去年2月に約760種類、12月に約470種類が追加され、今年3月で合計1370種類が規制対象になりました。
- パーソナリティ
- 90種類から1370種類。15倍以上ですね!
- 弁護士
- さらに、4月1日から改正薬事法が施行され、「指定薬物」の販売等だけでなく、所持、使用、購入、譲り受けが禁止になりました。違反すると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又はこれら2つが科されます。規制の対象が、これまでは指定された薬物を「売る店」側だったのが、「買う人」「使う人」まで広がったわけです。
- パーソナリティ
- これで少しでも被害が減ってくれるといいですね。
- 弁護士
- 本当にそう思います。法律で規制するには、今日お話ししたように、罪刑法定主義の観点を踏まえ、慎重に決める必要があるんです。
それにも関わらず、指定薬物の種類が15倍以上にも増え、さらに処罰の対象となる人の範囲が広げられたのは、やっぱり薬物被害が大きいことの表れだと思います。 - パーソナリティ
- 薬物の影響で事故や事件を起こしてしまうこともありますからね。
- 弁護士
- はい。薬物を使っている人だけの問題じゃ済まないこともあります。
- パーソナリティ
- 民主主義はもちろん大切ですし、危険な薬物は取り締まらなければいけないし、頭の痛いところですね。