悪質運転に対する厳罰化

2014年5月27日に文化放送「くにまるジャパン」に出演した際に話した内容を掲載しています。 テーマは「悪質運転に対する厳罰化」についてです。

パーソナリティ
今日は悪質な運転による交通事故の罰則についてのお話です。
弁護士
今月20日に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」略して「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されました。
これまでは、自動車の人身事故には、刑法の「危険運転致死傷罪」、または「自動車運転過失致死傷罪」が適用されていましたが、今回の法律では、刑罰の重さや、処罰の対象となる行為が変わりました。今日は、このうち、刑の重さと、「逃げ得」防止について、お話しします。
パーソナリティ
従来の刑の重さはどれくらいだったんですか?
弁護士
危険運転致死傷罪は「正常な運転が困難な状態」で事故を起こした場合に適用されるもので、上限は懲役20年。それ以外の事故には、自動車運転過失致死傷罪が適用され上限は7年でした。
パーソナリティ
ずいぶん差がありますね。たしか、ニュースで大きく報じられた事故なのに、危険運転に当てはまらなかった「コレどうなんだろう?」っていうものがありましたよね。
弁護士
はい。ご記憶の方も多いと思いますが、栃木県鹿沼市のクレーン車暴走事故や、京都府亀岡市で登校中の児童らの列に車が突っ込んだが事故などが有名です。これらの事故は、危険運転致死傷罪に当てはまらず、結局、自動車運転過失致死傷罪が適用されました。
パーソナリティ
遺族の方のお気持ちになったら「何で?」ってなりますよね。署名運動などもありましたね。
弁護士
はい。そうした声を受けて、このたび、危険運転致死傷罪と、自動車運転過失致死傷罪の中間となる条文が作られました。アルコールや薬物、特定の病気により、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」だった場合、刑の上限が15年と定められたんです。
パーソナリティ
「おそれがある状態」、なるほど。
弁護士
ただし、「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」という規定については、日弁連などから、条文の文言が曖昧で、処罰範囲が不当に拡大される恐れがあるのでは、という意見が出ています。今後の法律の運用を慎重に見守りたいと思います。
パーソナリティ
もう一つの「逃げ得」防止についても教えてください。
弁護士
飲酒運転で事故を起こした後、その場から逃走して、体からアルコールが抜けるのを待つ、大量に水を飲む、あるいは、逆にさらにお酒を飲むなどして、事故当時、どれだけ酔っていたかを分からなくする行為が問題になっていました。
パーソナリティ
「危険運転」だったと証明できないようにして、罪を免れようという行為ですね。
弁護士
そうした「逃げ得」をゆるさない、ということで、今回、酒や薬物の影響による事故などが発覚するのを免れようとする行為に適用される「発覚免脱罪」が作られました。 現場から逃げると従来のひき逃げの罪と合わせ、上限は懲役18年となります。
パーソナリティ
悪質な運転に対する目が厳しくなったということですね。
弁護士
そうですね。ぜひ、今日お話しした内容を覚えていただいて、より一層の安全運転を心がけていただければと思います。

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