暴走事故と脱法ハーブ

2014年7月15日に文化放送「くにまるジャパン」に出演した際に話した内容を掲載しています。 テーマは「暴走事故と脱法ハーブ」についてです。

パーソナリティ
池袋の駅前繁華街で、脱法ハーブを吸った男が車で暴走、死亡者が出る悲惨な事故が起き、その後も各地で、同様の事故が続いています。
弁護士
この週末も埼玉で事故がありました。 このコーナーでも5月に脱法ハーブの問題点や、危険運転の厳罰化についてお話したばかりでしたが、誰もが巻き込まれる可能性がある身近な問題ですよね。
パーソナリティ
事故のニュースの中に「自動車運転死傷行為処罰法」あるいは、「自動車運転処罰法」違反で逮捕、といった言葉が出ていました。
弁護士
まさにそれが、今年(※2014年)5月に施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」のことなんです。 この法律では「アルコールまたは薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ」て事故を起こすと、上限が懲役20年となっています。また「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」だと上限が懲役15年となりました。

パーソナリティ
5月より前は、どうだったんでしょう?
弁護士
従来、「危険運転致死傷罪」は「正常な運転が困難な状態」で事故を起こした場合に適用されるもので、上限は懲役20年。 しかし、それ以外の事故では「自動車運転過失致死傷罪」が適用され、上限は懲役7年となっていました。 しかし、これでは差がありすぎる…という声が強かったため、中間となる「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」の場合、刑の上限が15年という条文が作られたのです。
パーソナリティ
池袋の事故は、どんな罪になりそうですか?
弁護士
警察の捜査や、専門の医師の鑑定などにより、事故当時、「正常な運転が困難な状態」、あるいは「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」だったと証明されれば「危険運転致死傷罪」になります。
パーソナリティ
「アルコールまたは『薬物』の影響により」ということですが脱法ハーブは「薬物」ということになるんでしょうか。
弁護士
何をもって「薬物」というかは、法律によって異なります。脱法ハーブは、薬物の所持・使用・購入などを規制する、「覚せい剤取締法」や「麻薬及び向精神薬取締法」には当てはまらないし、また、「薬事法」の指定を受けていません。 それで「脱法」と言われるわけです。そのため、所持、使用、購入などをしても罰することができません。
パーソナリティ
でも、危険運転との関係だと?
弁護士
危険運転における「薬物」は、覚せい剤等の「違法な薬物」に限られず、運転を困難にする効能を持つものであれば「薬物」に該当する、とされています。そのため、脱法ハーブも効能により運転を困難にするなら、「薬物」に該当すると考えられます。
パーソナリティ
脱法ハーブは、危険運転との関係だと「薬物」ということになんですね。
弁護士
報道によると、池袋の事故は、過失傷害の疑いで逮捕された後、危険運転致死傷の容疑に切り替えて送検されています。その後に起きた北区の事故も、危険運転致傷の容疑です。 社会問題化している「脱法ハーブ」を使用した状態での車の暴走行為が、新しい「自動車運転死傷行為処罰法」で「危険運転」と判断されるかどうか、今後も注目していきたいところです。

この記事に関する法律サービス

ホームワンの刑事弁護