文化放送『くにまる食堂』に宮本尚紀弁護士が出演/708回テーマ 「ネット上の名誉棄損」編

2022年11月22日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の宮本です。

今回は、ネット社会の大きな問題となっている誹謗中傷についてお話してきました。有名人が法的措置をとる、といった話題が毎回大きく報道されていますが、ネット社会が広がる中、誰もが手軽に書き込めるため、困った情報も次々に発信されています。しかし、ネット上の情報流通は匿名の場合が多く、通常は書き込んだ人間を突き止めるのはハードルが高いため、そうしたことに関連する法律として、「プロバイダ責任制限法」が作られ、最近改正されて話題になりました。

まず、「プロバイダ」というのはネットに接続するための事業者で、プロバイダ責任制限法は、ネット上での不特定多数の間の情報流通に関して、プロバイダ等の責任の制限と、発信者情報の開示を求める権利を定めている法律です。

これまでは、書き込んだ人間を探すためには手間が二段階あり、第一段階は、サイトやSNSを提供する事業者に、書き込んだ人間のプロバイダ情報を求める必要がありました。もし拒否されたら、「発信者情報開示仮処分」の申し立てを行い、裁判所から命令してもらわなければいけませんでした。

これがクリアできたら、さらに次の段階として、書き込んだ人間のプロバイダに個人情報の提供を求めます。ただ、なかなかあっさりとは教えてくれないので、開示を求める訴訟提起をしなければならなく、かなりの手間と費用がかかるのが普通でした。また、プロバイダに訴訟を起こすのはハードルが高いので、被害者が泣き寝入りを強いられるケースも多かったのです。

それが今回の法改正では、新たに「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き」というものが新設されて、手続きがかなり楽になりました。被害者は、裁判所にサイトやSNSを提供する事業者に対して「開示命令の申し立て」を行って、この手続きの中で、事業者にプロバイダの名称等の開示を求めることができます。さらに被害者は、その情報を基に相手プロバイダに対しても、「開示命令の申立て」を行うことができます。サイトやSNSを提供する事業者に対する申立てと、一体として審理されることが可能になったわけです。

被害者の手続きは軽減される方向に向かっていますが、個人的にはさらにハードルが下げられる必要があると思っています。このネット社会、いつ誰が被害者になるかわかりませんし、まだまだ、個人で立ち向かうには困難が多いので、もしネット上で名誉棄損トラブルに巻き込まれることがあれば、適切な初期対応が円満・迅速な解決のカギなのは確かです。万一の場合は、決して泣き寝入りすることなく、専門家の助けを借りて、立ち向かっていただければと思います。ホームワンにもご相談いただければお力になれると思います。