文化放送『くにまる食堂』に中原俊明弁護士が出演/707回テーマ 「賃貸借の解除について」編

2022年11月17日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回は「家賃を滞納したらどうなるか」というテーマでお話しました。賃貸借契約で賃料の支払いは、店子、借主の基本的な義務です。滞納したら、貸主、大家さんは賃料支払い義務の不履行を理由に解除することができます。

契約解除には、催告といって、前もって滞納分の賃料を支払うよう伝えた上で解除を求める場合と、何も言わずいきなり解除を求める、無催告の二つがあります。ただ、家賃を溜めた場合は催告してからの解除が基本です。溜める側にも事情があるでしょうから、是正の機会を与える、ということになっているのです。

無催告でも良い場合として、法律では債務の全部を履行できないとき、それから債務者がその全部の履行を拒絶する意思を明確に示したときなど、5つのケースが挙げられていますが、家賃の滞納に関しては、よほどでない限りは無催告での解除は難しいです。

たとえば、契約書に「家賃を1か月分滞納したら、何も催告せず、ただちに契約を解除することができる」と書いてあった場合、契約は解除できるかというと、昭和43年の最高裁判決で、そうした特約があっても、無催告で解除を認めてもあながち不合理ではないといった事情がなければ無催告では解除ができない、という判断が出ていることからも、単に1か月程度の家賃滞納という事情だけでは、解除が認められることはありません。
  
賃貸借契約では、催告した上での解除であっても、単に賃料の不払いだけでなく、貸主と借主との間の信頼関係を破壊する程度の債務不履行がなければ、解除は認められない、とされています。一般的には、3か月程度の滞納がなければ、たとえ催告しても、賃貸借契約の解除は認められないことになっています。改正後の民法541条の「但し書き」にも、債務不履行が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、催告解除を認めないというルールが追加されています。

一方、店子の方に、家賃滞納のほかにも、部屋を汚したりとか、騒音を立てるなど信頼関係を悪化させるような事情があると、信頼関係が破壊されていると評価できる場合もあり、そうしたケースでは、たとえ1か月でも滞納した場合、契約の催告解除が認められることもあります。要は、あまりにも目に余る場合は別ですよ、ということです。

最近の民法改正で、賃貸借の解除に関するルールは、とても複雑になっています。トラブルがあった場合は、専門家への相談をお勧めします。

◇日時
毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇707回テーマ
 「賃貸借の解除について」
◇出演
番組パーソナリティ 野村邦丸さん 
法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士