文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/703回テーマ 「特別受益」編

2022年10月18日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回は、相続に関連したトピックスの中から、「特別受益」についてお話してきました。「特別受益」は、例えば、2人の子供が相続人で、上の子は、結婚したときに、土地の購入資金をプレゼントされたが、下の子には何もなかった、という場合、法定相続分の2分の1では不公平になってしまいます。そこで土地購入資金は、「特別受益」として、差し引いて考えようということです。

そのプレゼント「贈与」については、「相続分の前渡し」とみなし、その金額を相続財産に合算したうえで、それぞれの取り分を決め、相続人の間の公平を図る、というのが特別受益の制度です。民法の条文には「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため、若しくは生計の資本として贈与を受けた者」とあって、結婚した時に土地や住宅の購入資金をプレゼントされたとか、借金の肩代わりをして貰った、などが一般的な特別受益になります。

次に学費が特別受益に当たるかどうかですが、法律にある「生計の資本として贈与を受けた」といえるかどうかが問題になります。学費の場合、親の子に対する扶養の範囲内であるとして、特別受益に当たらないと判断されることもありますが、親の資産や収入状況、社会的地位、他の相続人との比較等を考慮して、特別受益かどうかを判断するとされています。

裁判では、長男だけが医学部で、他の子は別の学部に進んだ場合、長男が特別受益に当たるかどうかが争われたケースがあります。判決は、親が開業医で長男に後を継いでほしいと思っていたこと、ほかの兄弟たちも大学教育を受けていたこと、などの事情を基に、特別受益に当たらない、ということになりました。

例えば、上の子は国立大学に進学したが、下の子は私立大学の理系で、学費が何倍もかかった場合などもあると思いますが、これも、具体的な事情に応じ、ケースバイケースで判断されます。教育は金額だけの問題じゃなく、子どもそれぞれの個人差もあり、それぞれに応じた教育を行なった結果、費用に差が生じた場合、これは「親の扶養義務の合意的な範囲」であるとして、特別受益に当たらないとした判例もあります。

最後に、相続人が2人の兄弟で、それぞれ結婚して子供もいるものの、亡くなったおじいちゃんは、相続人の上の子の孫ばかり可愛がって、小遣いやオモチャなどをあげたりしていたが、下の子の孫には何もしていなかったという場合、それが特別受益に当たるか、についてです。

特別受益は、相続人の中で被相続人から贈与を受けた者がいると、初めて問題となる制度です。おじいちゃんが孫の1人だけに色々なものを与えたとしても、子供が相続人である場合には、孫は相続人ではないので、通常は特別受益に当たりません。ただ、もう一方の子供は面白くないですし、いざ相続のときには、トラブルの原因になることも考えられますので、注意が必要だと思います。

相続は本当に厄介な問題が色々とあるので、素人判断は避けて、弁護士などの専門家に話しを聞いたり、相談することをお勧めします。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇703回テーマ
「特別受益について」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士