文化放送『くにまる食堂』に中原俊明弁護士が出演/701回テーマ 「賃貸借の更新について」編
2022年10月06日
弁護士法人 法律事務所ホームワン
弁護士の中原です。
今回は、マンションやアパートなどの契約更新についてお話をしてきました。
法律的には「建物賃貸借の更新」といって、契約期間満了後も契約を終わらせず、期間を延期して契約を続けることをいいます。通常は2年契約が多いようですが、契約を更新することによってマンションやアパートに住み続けられます。
実際に、契約の更新はどのように行われるかというと、まず、更新時期が近づくと、貸主側から書類が送られてくると思います。貸主と借主、両方が合意して契約期間を更新することを「合意更新」といって、このケースでは、単に更新を合意するだけでなく、新しい契約での賃貸料や、契約期間などを変更することも原則として自由となっています。
しかし、借地借家法には「強行規定」というものがあり、これに反する借主に不利な条件の特約は、たとえ合意しても無効となります。また、契約期間の変更では、期間の上限に制限はありませんが、1年未満の場合は無効となり、期間の定めはない扱いとなります。賃料の値上げを言われて納得できない場合ですが、借地借家法では、合意がなくても「法定更新」の制度に基づいて更新されることがあり、可能になるのは次のケースです。
まず「貸主または借主が、期間満了の1年前から6カ月前迄の間に、相手に対して更新をしない旨の通知、または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったとき」、そして「このような更新を拒絶する旨の通知をした場合で
あっても、契約期間満了後に借主が使用を続ける場合に、貸主が遅滞なく異議を述べなかったとき」は、それまでの契約と同じ条件で契約を更新したものとみなされます。
よって、条件を変えるなら半年前までに通知する必要がある、ということです。
また、貸主が借主に「もう更新しない」という通知をする場合には、正当な事由が必要で、それがなければ以前と同一の条件で契約が更新されます。ただ「正当な事由」かどうか、というのはかなり難しく、貸主にとってはハードルが高いです。まず、「貸主と借主が建物の使用を必要とする事情」が判断の基礎で、他に「建物の賃貸借に関する従前の経過」や「建物の利用状況や建物の現況」「立退料の額」といった様々な事情を踏まえて判断されますが、立退料は他の要素を検討したうえで、最終的に正当事由の有無を判断する際の考慮要素とされています。
貸す側がどうしても契約を終わらせたい場合、それなりの立退料が必要になりますが、そこまで揉めるケースは稀だとは思います。ずっと同じ借家に住み続けていて、契約更新の合意など、求められたこともないという方も多いかと思いますが、これは賃貸借契約の「自動更新条項」によるものです。たとえば、賃貸借契約書では契約期間を2年間と定めていて、その条項に続いて「貸主または借主が相手方に対して、契約期間の満了の6カ月前までに、書面により契約更新を拒絶する旨の意思表示をしないときは、従前の契約と同一の条件で更に2年間更新されるものとし、以後もこの例による」などといった条項がある場合、これが「自動更新条項」といいます。
法定更新と自動更新の違いとしては、法定更新されると更新後の契約は期間を定めない扱いですが、自動更新条項に基づいての更新は、契約書の定めにより、 いまご紹介したケースでは2年ということになり、その期間内は原則として解約の申し入れはできません。さらに自動更新条項があっても、貸主が更新しない、と言ってきた場合、自動更新されなくなりますが、それが正当な事由に基づいていなければ、自動更新されなくても法定更新が行われることになります。
賃貸物件を巡るトラブルは複雑なケースも多くありますので、万が一、巻き込まれた場合、早めに法律事務所に相談されるのが解決の早道かもしれません。
◇日時
毎週火曜 11:31~
◇放送局
文化放送
◇番組名
『くにまる食堂』
◇コーナー名
「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇701回テーマ
「賃貸借の更新について」
◇出演
番組パーソナリティ 野村邦丸さん
法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士