文化放送『くにまる食堂』に中原俊明弁護士が出演/697回テーマ 「民事訴訟などのIT化」編

2022年09月06日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回は、「民事訴訟などのIT化」についてお話しをしてきました。民事訴訟は、基本的に裁判の当事者や代理人が裁判所に出頭し、主張をまとめた書面や証拠は紙ベースで提出するのが基本です。これをIT化することで、手間やコストを軽減して、民事訴訟を使いやすくしよう、という、法改正の動きが出てきています。

裁判所は、現在も書面をFAXで送るのが普通の世界なので、一般の方にとっては、かなり驚かれる状況だと思います。それでも、一部の裁判所では、書面などの電子データでの提出が認められてはいますが、かなり限定的なものでした。これが、ようやく訴状や書面、証拠などについて、電子データでの提出が幅広くできるようになり、今までは、当事者や代理人が裁判所に行かなければならなかった「口頭弁論」もウェブ会議で開くことができるようになります。

以前は電話を使っての「電話会議」が行われていましたが、新型コロナの拡大後は、弁論準備手続きなど、一部ではウェブ会議も可能となっており、今回、法改正で利用できる範囲がもっと広がることになります。証人尋問も、裁判所や当事者に異議がなければ、ウェブ会議ができるようになり、判決書も基本的に電子データになります。また離婚調停でも、電話会議やウェブ会議だけで、離婚を成立させることができるようになる予定で、裁判所まで遠くて行くのが大変という人には助かると思います。

他にも、当事者に寄り添った法改正が予定されており、現在は、訴状などに、当事者の氏名・住所の記載が必要で、そのことで性犯罪やDVの被害者が、加害者に氏名・住所を知られる危険を恐れて、訴訟を起こしにくいと言われていました。そこで、相手方に住所や氏名を知られることで、社会生活に著しい支障が生じる恐れがあると裁判所が認めた場合には、住所や氏名などを書かなくても良いことになります。
  
民事訴訟手続以外でも、訴訟になる前と訴訟の後、専門用語で「民事保全」や「民事執行」の手続もIT化の動きがあり、そのほか先程の離婚関連、民事調停、労働審判、倒産手続などもウェブ上でできるように、国で審議が行なわれています。

また、手続のIT化の他に、議論されているものとして、破産や個人再生の手続が開始したことや、破産であれば免責、個人再生であれば再生計画が認可された場合、住所・氏名と共に国が発行する新聞のような「官報」という書類に掲載されて、現在は、ネットで誰でも簡単に見られる状態になっています。ところが、これを悪用して、破産者などのプライバシーが過剰に侵害されたり、更生を妨げたりするケースもあって、これを見直すべきかどうか、というのも議論されています。

裁判のIT化が進むことで生じる、その利点と欠点をしっかりと検証し、法律的にも便利な運用が実現してくれるといいと思います。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇697回テーマ
「民事訴訟などのIT化」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士