文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/695回テーマ 「葬儀費用と相続について」編

2022年08月23日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回は、葬儀費用と相続というテーマで話しをしてきました。

葬儀には、ある程度まとまったお金が必要になります。ご家族のどなたかが残念ながら旅立たれたとき、その葬儀費用を誰がどのように支払うかですが、残されたご家族が話し合って、費用は相続財産から出し、残ったものを相続人で分ける、というケースが多いようです。そのほか、葬儀費用は葬儀を主宰した「喪主」が持つべきという考え方や相続人がその法定相続分に応じて負担すべきという考え方、  また地域の慣習などによって定めるべきという意見もあります。

しかし、相続財産から、お葬式などの費用を支払おうと話し合っても、親族の中に「私は嫌だ」という人がいたら、けっこう面倒なことになります。実際、裁判に持ち込まれたこともあって、今からちょうど10年前、平成24年に名古屋高等裁判所で出た判決では、「追悼儀式に要する費用については、同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し、手配等して挙行したものが負担すると解するのが相当」、…つまり、喪主が負担すべきという見解を示しました。

そのため、最悪、裁判に持ち込まれた場合は、高額な葬儀費用を、1人ですべて負担しなければならない可能性がありますから、葬儀の規模や費用について慎重に考える必要があります。  先ほどの名古屋高裁の判断では、喪主が負担する前提として、「亡くなった者が、予め葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては」と、しています。つまり、残された家族が葬儀費用で揉めるのを防ぐためには、自分が亡くなった場合の葬儀はどうするか決めておくとか、親族間で葬儀費用につい事前に良くて話し合っておく、などが、必要になってきます。

しかしながら親族で合意していても、トラブルになることもあるんです。例えば、相続人の間で、葬儀費用は亡くなられた方の預金から支払う、ということで合意していたが、支払が済んだ後で、  実はかなりの額の借金が残っていたことが分かった場合、そんなマイナスの遺産はいらない、相続放棄したい…と思っても、預金を引き出してしまうと、それは相続財産を処分したことになるので、法律的には、プラスもマイナスも遺産を全部引き継ぐ、「単純承認」をしたものとみなされてしまい、相続放棄が認められない可能性はあります。

ただ、裁判所の判断では、葬儀費用を亡くなられた方の預金から出してしまった場合でも、非常識なほど高い金額でなければ、相続放棄を認めたケースもあります。本格的な相続の前の、葬儀費用をどうするかだけでも、やっかいな法律問題に発展する可能性があります。親族のトラブルを避けるためにも、相続に関しては早いうちから専門家に相談することをお勧めします

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇695回テーマ
「葬儀費用と相続について」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士