文化放送『くにまる食堂』に宮本尚紀弁護士が出演/692回テーマ 「退職勧奨」編

2022年08月02日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の宮本です。

昨今の物価高や円安で、コストが高騰するなどし、中小企業の経営を取り巻く環境は厳しさを増すばかりで、業績が悪化して人員削減を真剣に考えるところも増えています。そこで今回は、企業が従業員に対して退職を勧める、「退職勧奨」についてお話しをしてきました。

「退職勧奨」とは、クビにする、とは違い、あくまでも自発的な退職を促すために説得する、ということです。そのため、法的効果はなく、これは「お願い」のレベルなので、従業員の側としても、頼まれたからと言って必ずしもやめる必要はないわけです。しかし、企業としては辞めてほしいからお願いするわけですから、一歩間違えると、無理やり退職の意思を引き出してしまう、つまり退職を強制してしまうことにもなりかねません。そうなると、これはやはり問題となります。

一般的に、企業は、社会通念上相当と認められる範囲内なら、従業員に「退職勧奨」をできることになっています。でも、一線を越えて、従業員に不当な心理的圧力を加えたり、名誉感情などの人格的利益を不当に害するような言葉を使うなどは絶対にしてはいけません。そして、退職勧奨のポイントとして、以下の4つ挙げられています。
  
 ①「具体的言動」
 ②「面談の時間・回数」
 ③「労働者の拒絶意思表明」
 ④「対象者選定基準の合理性」

まず、「具体的言動」というのは、「バカヤロー」といった、侮辱的な発言は当然許されません。それから、もし退職勧奨に応じなかったら、こうなるぞ…と、不利益を必要以上に強調して伝える態度が見えるようだと、これは「違法な退職勧奨」とみられやすいです。また机を叩いたり、何人もの担当者が取り囲んで威圧したり、というのも避けるべきです。こうしたケースを不法行為として会社に慰謝料の支払いを命じた例もあります。

二つ目の「面談の時間・回数」というのは、具体的な定めはありませんが、長い時間ネチネチ退職を勧めたり、それを何度も繰り返すようだと、違法と判断されやすいです。回数は区切って、従業員はあくまでも任意で話し合いに応じる、そういった形を確保することが大切です。

三番目の「労働者の拒絶意思表明」ですが、従業員が「私は辞めたくありません」とはっきり言ったにもかかわらず、しつこく「考え直してくれ」と言い続けるのもしてはいけません。

最後の「対象者選定基準の合理性」というのは、数ある従業員の中でなぜその人を選んだかという、その基準が合理的かどうかというのが問題になります。裁判例でも、退職勧奨されてもやむを得ないことがあったのか、それほど能力がなかったり、素行が悪かったのか、というところが問題になっています。

企業側は、退職勧奨を受け入れるかどうかは従業員が決める…と、しっかり認識して臨むことが大事です。時間や回数、発言内容をめぐっての争いも多いので、しっかり記録を取ることも必要です。退職推奨については、気を付けるべきポイントは多いですから、始める前に、弁護士にご相談することをお勧めします。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇692回テーマ
「退職勧奨」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 宮本尚紀弁護士