文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/691回テーマ 「労働契約と就業規則の関係」編
2022年07月26日
弁護士法人 法律事務所ホームワン
弁護士の中原です。
今回は「労働契約と就業規則の関係」についてお話をしてきました。まず、労働契約というのは、労働者と使用者の間で結ばれる契約です。労働者は使用者のもとで働くこと、使用者はその労働に対して賃金の支払いを合意することで、成立します。賃金や労働時間などの具体的な労働条件についても、労働者と使用者の合意によって決められることになっています。
使用者側が気を付けるべきこととして、会社は、従業員を採用するとき、賃金や労働時間、そのほかの労働条件をきちんと明示しなければなりません。違反すると罰金になる可能性があるので、雇用契約を結ぶときは労働条件を記載した書面を提示する必要があります。
次に、就業規則とは、会社が独自に定めるもので、賃金や労働時間、解雇や懲戒処分になる項目、服務規律の内容など、従業員が仕事をするにあたって守るべき規律のこといい、使用者は個々の項目について労働者と合意して定める必要はありません。労働契約は、労働者と会社が個別に結んだ一対一のルール、一方、就業規則は従業員すべてとの統一的なルール、と考えることができます。
労働契約を結ぶにあたっては、使用者側は、「合理的な労働条件を定めている就業規則を」「労働者に周知させていた場合」は、従業員の個別の同意がなくても、就業規則で定める労働条件が労働者に適用されます。周知といっても、従業員に内容を読ませることまでは必要なく、従業員がいつでも就業規則を確認できる状態にしておけば大丈夫です。例えば、会社PCからデータにアクセスする方法を知らせておくなどでも構いません。
もし、労働契約と就業規則が矛盾することがあった場合、労働者に有利な方に従えば大丈夫です。まず、労働契約は、各労働者と会社が個別に約束するものなので、そちらが有利ならそれに従えば良い、というのは分かり易いです。逆に就業規則の方が有利な場合ですが、労働契約法という法律で、「就業規則よりも低い条件を労働契約書で定めることはできない」とされていて、就業規則より条件が悪い契約書は無効となりますので、その部分については就業規則のルールが適用されます。
2つの内容が違ったら労働者に有利な解釈が行なわれます。優先順位を会社が勝手に決めることはできないのです。「労働契約書ではなく、会社のルール、就業規則に従え」とか、「納得して契約したのだから労働契約書に従え」といった主張は、労働審判や労働訴訟などで認められることはありません。
実際、2つの違いが問題になるケースとして、就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合、作成が義務付けられています。正社員やパートが両方いる場合、それぞれの区分に応じて就業規則を作る必要があります。しかし、実際は正社員用の就業規則しか作っていない企業も多く、そうなるとパートの人は、労働契約書に定められた条件よりも、就業規則の方が全然いいじゃないか、という問題が出てくる場合があります。
こうした労務に関わるルールはとても複雑ですので、トラブルを未然に防ぐには、ぜひ早い段階から、私たち専門家にご相談いただくことをお勧めします。
◇日時
毎週火曜 11:31~
◇放送局
文化放送
◇番組名
『くにまる食堂』
◇コーナー名
「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇691回テーマ
「労働契約と就業規則の関係」
◇出演
番組パーソナリティ 野村邦丸さん
法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士