文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/686回テーマ 「分別の利益」編

2022年06月21日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回は「分別(ぶんべつ)の利益」についてお話をしてきました。分別というと、どうしても燃えるゴミと燃えないゴミを分ける、ということを連想してしまうと思いますが、『分別の利益』とは、借金の保証人の責任に関係して使われる言葉になります。

1つの債務について、保証人が2人以上いる場合に、「分別の利益」の有無という話が出てきます。例えば、保証人が2人いるケースで、保証人は借金の半分ずつを保証すればいいか、それともそれぞれ全額を保証する責任があるかについては、保証人の種類によって変わってきます。2人以上いても、1人で全額補償をしなければならない場合があって、これを「連帯保証人」といいます。それ以外の場合は、単に「保証人」あるいは「単純保証人」といい、この場合、2人以上いれば1人で全額保証の義務はありません。貸す側は、連帯保証人の方が、より確実に回収が期待できるため、多くの契約は連帯保証人となっていることがほとんどです。

ここで、今回の話しである『分別の利益』についてですが、連帯保証人は、複数いても、全員が全額の保証を求められるので、この場合が「分別の利益がない」ことになります。  でも、ただの「保証人」なら、2人なら半分ずつ、3人なら3分の1ずつ保証すればいい場合があって、このケースの場合は、「分別の利益がある」とういことになるのです。実は、最近、奨学金の返済に関して、この言葉が注目されました。

日本学生支援機構(育英会)は、奨学金の返済に際して保証人をつけることを求めています。親が連帯保証人で、それ以外の親戚がただの保証人ということが多いのですが、学生が返せず、親も返済不可能という場合に、保証人である親戚はいくら払わなければならないかというと、親族は、ただの保証人ですから、半分だけを支払えばいいのです。

しかし「分別の利益」なんて知らない人がほとんどですから、日本学生支援機構は、昔からただの保証人にも全額返還を求め、求められるまま全額払ってしまう人もが多くいました。ところが、のちに全額返還の義務がなかったことを知った方が訴訟を起こし、払い過ぎた分の返還を求めました。日本学生支援機構は、以前からずっと保証人に対し、全額の支払を請求していましたので、裁判で負けると取り過ぎたお金を返さなければなりません。しかも、ただの保証人が全額保証しなくてもいいことを承知の上で、お金を取り続けていたので、その場合、お金を受け取った時から利息をつけて返す必要があり、負けたら大変なことになる、と争ったわけですが、結局、日本学生支援機構側が負けてしまいました。

利息は、以前は年5%、最近は年3%に下がりましたが、取り過ぎたお金は、ここ5年間で累計して10億円もあるそうで、単純に10億の年3%分だけとしても3000万円となることから、早く返さないと大変なことになります。

ホームワンでは、借金問題のご相談を受け付けしています。連帯保証人になってしまい、請求が来てしまい、支払えない、など、お困りのことがございましたら、一人で悩まずにまずはご相談ください。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇686回テーマ
「分別の利益」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士