文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/682回テーマ 「親の懲戒権の廃止」編

2022年05月24日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今回の『くにまる食堂・日替わりランチ ホームワン法律相談室』では、「親の懲戒権の廃止」についてお話してきました。

まず、懲戒権とは「こらしめる」という意味に、権利の“権”と書きますが、文字通り、親には子どもをこらしめる権利が認められています。しかし、現在、親子関係に関する法律の改正作業が進んでいて、その中の1つとして、今年中に廃止されそうな見込みです。そもそも、そんな権利があること自体が驚くかと思いますが、民法にちゃんと定められていて、一般的には「叱る、殴る、ひねる、縛る、押し入れに入れる、食事を禁止する」などが挙げられています。

体罰が虐待として問題視される現在、親の懲戒権そのものが時代錯誤だと議論されるようになり、廃止に向けて動いているのが現状です。そもそも、この法律は、明治時代に民法が定められた時からある項目で、元々の規定では単に「必要な範囲であれば子を懲戒できる」とされていたものが、11年前に一部改正されて、現行法では「子の利益のための監護・教育に必要な範囲内で懲戒することができる」と定められています。でも何をもって子どもの利益になるのかを判断するのは難しく、教育の一環として基本的には認められる、という発想です。

歴史的には、戦前の家制度の下、家族秩序の維持手段としての性格もあったとされています。親は子を支配できるとか、子は親に従わなければならない、という発想です。戦後になっても、まだ体罰が社会的に許容されていた時代には、廃止が議論されるほどの大問題にはならなかったのです。でも今は体罰をしてはいけない、とされており、この懲戒権は完全に時代にそぐわなくなっています。特に、体罰を加えた親が「これはしつけであり、法で認められた懲戒権の行使だ」と言い出したことがあり、さすがに廃止すべきではないか、という意見が多数派になってきたのです。

今後、次のような規定が設けられる予定なのでご紹介します。「子を監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」というものです。民法は、社会生活の最も基本になる法律ですが、戦前に作られてそのままとなっている部分も多いので、ここ数年で時代に即した内容にどんどんアップデートされています。そのひとつが、18歳成人です。そのほかにも、契約に関する規定が120年ぶり大改正されたなど、ニュースでも取り上げられていたので、ご存じ方も多いかと思います。

以前に、嫡出推定の見直しの話をした時にも触れましたが、長らく問題になってきた、『女性の再婚禁止期間の廃止』も改正案として盛り込まれています。古い考えにとらわれることなく、柔軟な発想で、未来を生きる若い人たちの生き方を支えていく、そんな法律にしていってほしいと願っています。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇682回テーマ
「親の懲戒権の廃止」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士