文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/672回テーマ 「有責配偶者からの離婚請求を巡る判例」編
2022年03月08日
弁護士法人 法律事務所ホームワン
弁護士の中原です。
今週は、「有責配偶者からの離婚請求」についてお話をしてきました。まず、「有責配偶者」とは、浮気など、離婚に至る主な原因を作った配偶者のことをいいます。たとえば、浮気した夫が、その相手の女性と一緒になりたいから別れてくれ、と言い出した場合、離婚の原因は夫にあるわけですから、有責配偶者(夫側)からの離婚請求は、原則として認められないのです。
しかし、これには例外もあって、1987年、今から35年前に出た判決によると、原則として、有責配偶者からの離婚請求であっても、次に挙げる3つの条件をクリアしていれば、許されないとすることはできない、という判断が出ています。
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間の対比において相当の長期間に及んでいること
②夫婦の間に未成熟子が存在しない場合であること
③相手方配偶者が、離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するような、特段の事情が認められないこと
簡単にいうと、別居期間が長くて、小さい子もいなくて、離婚しても相手方も問題ないだろうという場合には、有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚できる可能性があるということです。
まず、「相当の長期間」とは、判例によると、22年間、16年間、14年間、9年間、8年間の場合に、有責配偶者からの離婚請求を認めています。しかし反対に、11年間、8年間の別居でも認めない判例がありますので、目安として10年くらいがボーダーラインになると考えられます。
次に、未成熟子というのは、何歳という具体的な年齢ではなく、経済的に自立できない子どもを指します。判例の中には、高校生の子どもがいて別居期間14年というケースで、有責配偶者からの離婚請求を認めたものもありますが、裁判所は、ケース・バイ・ケースで判断しますので、未成熟子の不存在ではなくても、認められるケースもあります。
3つ目ですが、専業主婦など、収入がない方は、離婚されたら困るのが普通だと思います。具体例として、判例では、妻に住居、資産、収入がなく、その上病気で働けず、子どもにも身体障碍があるというケースでは、離婚によって、妻が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれ、著しく社会正義に反する、と判断したものがありました。
有責配偶者からの離婚請求には困難がつきものですが、決して離婚が不可能なわけではありません。裁判にはいろいろな事情が関係してきますから、無理だとあきらめる前に、是非一度、ホームワンご相談いただければと思います。
◇日時
毎週火曜 9:45~
◇放送局
文化放送
◇番組名
『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇672回テーマ
「有責配偶者からの離婚請求を巡る判例」
◇出演
番組パーソナリティ 野村邦丸さん
番組火曜日パートナー 西川文野さん
法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士