文化放送『くにまるジャパン 極』に宮本尚紀弁護士が出演/653回テーマ 「変形労働時間とは」編

2021年10月20日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の宮本です。

ことば自体,初めて聞く方も多いかもしれませんが,今週の『くにまるジャパン極』では、「変形労働時間制」についてお話しました。

日本の労働時間は労働基準法に基づき、原則として週に40時間、1日8時間と決まっています。でも業種によっては、季節によって閑散期と繁忙期などがあり,繁忙期は,どうしても仕事時間内に片付かず、一日8時間を超えることもよくあると思います。そんな時に使えるのが「変形労働時間制」です。これは、法律で決められたリミットを越えなければ、1日8時間を超える日があっても時間外労働時間として扱いは不要、と、労働時間を柔軟に決められることができる制度です。

実は、国の統計では、「変形労働時間制」を採用しているのは、日本の会社のおよそ6割に上っています。社員1000人以上の大企業に限れば、この率は8割近くまでになっています。一年を通じて,毎日8時間、週に40時間、働ける職場の方が実は少なくて、それでは効率が悪い企業がほとんどで,「変形労働時間制」を採用している企業が多いのです。
この「変形労働時間」は1週間、1ヶ月、1年の3種類がありますが、今回は1ヶ月のタイプで考えてみたいと思います。

今月、10月の月末が忙しそうだから変形労働時間を導入したい、という場合ですが、まず週の法定労働時間、40時間に、今月の日数、31をかけます。すると1240という数字になりますが、これを7で割った数字が1ヶ月当たりの労働時間になります。具体的には、約177.1時間です。1ヶ月当たり177.1時間を超えなければOKというわけです。その範囲で、10月の最終週だけ一日10時間労働にして、他の週の労働時間をその分削る、ということができるわけです。

ただ、会社の都合で勝手に決められると、通常勤務時間のつもりで予定を組んでいる人は困ってしまうので、制度を採用するときは、就業規則などで必要事項について事前に決めておく必要があります。それに、けっこう細かい決まりがあって、たとえば、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。今日は忙しいから、明日の分を1時間削って今日に回す、ということはできません。現場ではいろいろアクシデントも起きてくると思いますが、例えば、急に体調が悪くなって休む人も出てくるでしょう。それでもシフト表では9時から17時になっているけど、休んだ人の分をカバーしたいから19時まで働いてね、というのは、法律的にはできないということです。どうしても働いてほしければ、残業をさせることになるので、手当を出すなどの対処が必要です。

変形労働時間制を導入して、シフトを組むときは、慎重の上にも慎重さが要求されます。  労働時間の設計には、考えなくてはいけない要素が山ほどあり、軽く考えていると、労働裁判や労働審判に巻き込まれる、という事態にもなりかねません。ホームワンにご相談戴くなど、専門家のアドバイスを受け、取り組んで戴ければと思います。

◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇653回テーマ
「変形労働時間とは」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 宮本尚紀弁護士