文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/642回テーマ 「相続分の放棄と譲渡」編

2021年08月03日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今週の『くにまるジャパン極』では、「相続分の放棄と譲渡」というテーマでお話をしました。

まず,相続放棄というのは厳密な手続きで、自分が相続人になったことを知ってから3カ月以内に,戸籍を集め、家庭裁判所に「相続放棄の申立」をする必要があります。一方,今回のテーマである「相続分の放棄」は、期限は決まっていなく、そもそも裁判所に申し立てる必要もありません。他の相続人に対して「遺産は不要」と意思表明するだけで、特に決まった手続きもないため、書面を作って実印を押して「放棄」とされる方が多いです。ただ「相続分の放棄」では、放棄できるのはプラスの財産だけで、もし亡くなられた方が借金を抱えていた場合は,借金だけは引き継がなければならないのです。そのため,事前にきちんと確認しておかなければ危険です。
遺産分割協議は相続人全員が話し合って決める必要がありますが、遺産がいらなければ、ずっと付き合うのが煩わしいと感じる人もいます。そのような時に、この「相続分の放棄」を表明すればいい訳です。裁判所の遺産分割調停でも、「相続分の放棄」をして、調停手続きから手を引かれる方もいます。

夫を亡くした妻が自分は遺産はいらないが、三人の子どもたちの中で一番経済的に逼迫している長男に、自分の取り分を譲りたい,これを「相続分の譲渡」といいます。このケースの場合,妻の相続分は2分の1、子どもたちは残りを等分なので、2分の1のさらに3分の1で6分の1ずつとなりますので,妻の分がすべて長男に行くと、長男の相続分は3分の2になるわけです。また「相続分の譲渡」は、当事者同士の契約なので、他の相続人が反対しても譲渡可能ですが,内容によっては不公平感もあり,実際にこうした例でトラブルが起きたケースも多いです。

しかし、上手に使えばとても便利な手続きです。例えば、遺産は欲しいが、不動産より現金がいいという場合、相続分の不動産を誰かに譲渡して、その分の現金をもらうことが可能です。換金しにくい財産を買い取ってもらうイメージです。現金はないが土地だけがあるといった場合に、相続人の誰かに相続分を全部譲渡して、残りの相続人には現金を支払うという形を取れば、遺産分割の手続きも簡単になり、譲渡した方も使いやすいキャッシュが手に入って、残りの面倒な相続手続きからも解放されることになります。

相続は家庭事情により千差万別なので、自分たちに合った方法を選ぶことができます。分からないことがあれば、ぜひホームワンにご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇642回テーマ
「相続分の放棄と譲渡」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 松井佐祐里さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士