文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/635回テーマ 「退職勧奨」編

2021年06月15日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の山田です。

コロナ禍で経営が苦しい中小企業は増える一方です。業績が悪くなり、あれこれ手を尽くしても見込みが立たない、そこで、本当なら絶対にやりたくないが,人員削減に手を付けざるを得ない企業も増えています。
今週の『くにまるジャパン極』では、「退職勧奨」をテーマにお話ししてきました。

「退職勧奨」とは、言葉の通り、企業が従業員に退職を勧めることです。あくまで、従業員の自発的な退職を促すための説得のため、それ以上の法的効果はありません。企業が従業員に退職を勧める程度は問題ありませんが、それがエスカレートして無理やり、従業員の退職の意思を作り上げてしまう、つまり「退職を強要する」ことは問題です。社会通念上、相当と認められる範囲を超え、従業員に不当な心理的圧力を加えたり、名誉感情などの人格的利益を不当に害すような言葉を使うことは、許されません。

「退職勧奨」には4つのポイントがあります。

①具体的言動 
②面談の時間・回数が、どうだったか
③労働者が拒絶する意思を表明していたか
④対象者を選定した基準が合理的といえるか

まず①の具体的言動ですが、暴力的な行為や侮辱的な発言がNGなのは当然として、応じない場合の不利益を必要以上に強調して伝える態度も、違法な退職勧奨という評価に結び付きやすいです。机を叩いたりとか、何人もの担当者が取り囲んで威圧的な態度を示したりといったことは、あまりお勧めできません。

それから②の面談の時間・回数ですが、何時間あればいいとか、何回までならOKといった明確な線引きはありません。ただ、退職を執拗に迫ったり、時間が長すぎると、圧力を加えて帰さない、違法な退職勧奨があったと評価されかねません。回数や時間を区切り、従業員も任意に話し合いに応じたと堂々と言えるような形にすることが大事です。

それでも辞めたくない従業員の方もいるかと思います。そこが③の労働者の拒絶意思表明で、「私は辞めません!」とはっきり意思表明しても、しつこく退職勧奨を続けると違法と評価される可能性が高いです。ただし、労働者の方が、  退職条件について正しく理解できていないとみられる場合に、意思確認の意味で、何度か尋ねるような場合は別です。

そして、なぜこの人が選ばれたのかという問題ですが、それが、④対象者選定基準の合理性です。選び方が合理的かどうかです。年齢のように客観的基準で行うのが望ましいです。ただ、何歳以上の女性を対象とするとか、障害あるものを対象とするといった場合、違法な差別だとされてしまいます。また辞めさせたい従業員を、いわゆる「追い出し部屋」で働かせるケースもあるようですが、退職に追い込むための人事は不当な動機・目的に基づくとして違法であり、無効とされますので、注意が必要なところです。

企業側は、退職勧奨を行うにしても、辞めるか残るかは、あくまで従業員が自分で決めること…という姿勢で臨むのが肝心だと思います。後々、トラブルに発展させないためにも、どうやって退職勧奨すればいいのか、専門家である弁護士にまずご相談されることをお勧めします。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇635回テーマ
「退職勧奨」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹弁護士