文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/604回テーマ 「預託商法にご注意を!」編

2020年11月12日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

少し前に、高級車専門のカーシェアを展開していた会社が破産し、その会社に投資していた方々が途方に暮れている、というニュースがありました。ローンを組ませて高級車を購入させ、カーシェアで運用した利益を配当するということだったそうですが、これは「預託商法」に当たると考えられます。そこで今日の『くにまるジャパン極』では、「預託商法」についてお話しました。

「預託」というのは「預けて託す」という意味で、金銭あるいは物品を業者に預けて運用を任せることを指す言葉です。つまり「預託商法」は、オーナーから預かった商品を他の客に貸し出して、そのレンタル料を配当するやり方を指します。今回のケースはちょっと違いますが、通常は、事業者は自ら商品をオーナーに販売し、それを預かって貸し出す仕組みで、太陽光パネルや健康器具、健康食品などがよく使われます。オーナーは自分が買った商品を実際に手にする機会はなく、購入と同時に商品は預けられてしまい、確認できないのが普通です。それどころか事業者は、その商品そのものを持っていないケースも珍しくありません。

1981年に起きた有名な「豊田商事事件」はその典型で、「預金よりも利回りがいい」と「金」を売りまくったのですが、実際は会社に「金」はなく、投資者に預かり証を渡すだけでした。被害者3万人、被害総額2千億円という大事件になったことで、当時の報道を覚えている方も多いのではないでしょうか。この事件をきっかけに「特定商品預託法」という法律が生まれて、事業者には正確な情報提供が義務付けられたのですが、残念ながら今回の事件でも分かるように、詐欺被害はなくなっていません。

投資者のだまし方の決まり文句は「銀行に預けるよりずっと有利」で「元本保証」。マイナス金利時代にはとても魅力的な言葉です。そして最初は配当金と称して実際にお金を振り込んで安心させるケースが多く、今回のカーシェアでも、車購入代金の1割が支払われていました。ただ実際は、他の客が支払ったお金を充当させることが多く、自転車操業が破綻すれば、取り戻すのは不可能に近いです。

悪質な商法で被害も後を絶たないので、消費者庁は今年2月、消費者被害防止に向けた検討を始めていましたが、来年の国会で特定商品預託法は改正、預託商法は原則禁止となり、違反した事業者に対する刑事罰も、新たに設けられる見通しです。これで預託商法がなくなれば良いですが、被害額の大きさを見ても分かる通り、いずれ似たような事件が起きるのではないかと考えられます。

高齢者層の被害が目立ちますが,再来年の4月には、成人年齢が18歳に引き下げられますから、まだ人生経験がこれからの18歳、19歳が、様々な事業者のターゲットにされるのではと危惧しています。引っかからないための基本は、とにかく「必ず儲かる」はありえない話だと認識しておく事です。おいしい話は、絶対に鵜呑みにしてはいけません。少しでも不安があるなら、はっきりと勧誘を断ることも大切なポイントです。家族や友人など、周囲に相談するのも大切ですし、おかしいと思ったら消費者庁の消費者ホットラインなども活用してみてください。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇604回テーマ
「預託商法にご注意を!」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 弁護士