文化放送『くにまるジャパン 極』に清水太郎弁護士が出演/601回テーマ 「インターネット上の誹謗中傷に対する対応策」編

2020年10月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の清水です。

この5月に、リアリティ番組に出演中の女子プロレスラーが、22才の若さで亡くなられた悲しい事件がありました。原因は、ネットでの誹謗中傷ではないかと言われていましたが、今日の『くにまるジャパン極』では、インターネット上の誹謗中傷にどう対応するか、というお話をしてきました。

この種の事件は本当に数が多くて、相談を受ける機会も多いです。ネット社会の現代では、芸能人でなくても中傷被害に遭いますし、企業でもブラック企業などと言われてしまう危険があります。被害対応としては、中傷発言の削除要求などもありますが、今日は、ネットに上げられた内容が名誉棄損や侮辱にあたる場合、発信した人物に対し損害賠償請求するケースについてです。

今この瞬間にも、苦しい思いをしている方は多いと思いますが、対抗手段はあります。3つのステップに分かれていて、まずは書き込みのあったサイトの運営者に対して、発信者のIPアドレスの開示を請求します。IPアドレスというのは、ネットに接続された機器それぞれに割り当てられたナンバーで、インターネット上の住所のような役割を果たすものです。それが分かれば発信者を特定できるのか、と言えば、そう簡単ではありません。誹謗中傷は基本的に匿名で書きこまれるので、サイトの運営者はその人の住所氏名まで把握していません。この段階で判るのは、情報を発信したスマホ、パソコンなどの機器と、書き込みが行われた正確な時刻です。

2つめのステップは、発信者が契約しているプロバイダー、例えば、OCNやニフティなどの企業に発信者情報開示請求の訴訟を起こします。これでようやく発信者の住所、氏名、メールアドレスが判ります。また訴訟を提起する前か、あるいは同時に、プロバイダーに対し発信者情報を消去しないように,「IPアドレスなど発信者情報の消去禁止を求める仮処分」を申し立てる事も多いです。

そうして、やっと3つめのステップ、損害賠償請求になります。裁判を通じて、発信者による中傷が、名誉棄損の要件に該当する事などを主張していくことになりますが、ここからがとても大変で、かなりの時間と労力が必要になりますし、被害を受けられた方の金銭的負担も大きくなります。ただ、現在これは大きな社会的問題となっていますから、監督官庁である総務省は、発信者の特定を簡単にできる、「新たな裁判手続き」作りを急ピッチで進めているようです。これは被害に遭われている方には良い話なのですが、総務省が考える新しい制度は、憲法で保障されている表現の自由を制限しかねないという反対意見も出ていて、現時点ではどうなるか、まだ予断を許さない状況です。

現在の制度では解決までかなり時間がかかるのが事実です。それでもネット上の記録はどんどん消えていきますから、できるだけ早く、弁護士などの専門家にご相談いただくのがいいと思います。

得々情報 暮らしインフォメーション 
ホームワン法律相談室でした。
【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇601回テーマ
「インターネット上の誹謗中傷に対する対応策」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 清水太郎 弁護士