文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/597回テーマ 「ストーカー規制法」編

2020年09月15日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

本日の『くにまるジャパン極』では、今日はストーカー事件で注目すべき最高裁判所の判決が出た、というお話をしました。ストーカーという言葉も、今ではすっかり説明不要となりました。ストーカー規制法も、施行されて今年で20年になります。1999年に女子大生がストーカー被害の末、殺害されたという、いわゆる「桶川ストーカー殺人事件」が発生して、翌年、これがきっかけとなって「ストーカー規制法」が生まれました。この法律では「ストーカー行為」をした者は、1年以下の懲役、または100万円の罰金ということになっています。

ストーカー行為というのは、同一の者に対して「つきまとい等」を反復して行なうことです。「つきまとい等」というのは、法律的には、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、その者や一定の親族などに対し、法律が定める一定の行為をすること、というように、若干込み入った表現となっています。

「法律が定める一定の行為」というのは、具体的に、「つきまとったり、待ち伏せたり、住居に押しかけたり、住居の近くをうろついたりする」。それから「監視していると告げる行為」「面会や交際の要求」「乱暴な言動」「無言電話」「拒否したのに連続してメールなどを送る」「汚物の送付」「名誉を傷つける」「性的羞恥心を侵害」… といった行為が8項目に分けて挙げられています。ほかにも「住居、勤務先、学校その他通常所在する場所(住居等)の付近において見張りをする行為」が挙げられていますが、今回の最高裁判決ではこの“見張り”がクローズアップされました。

裁判では、別居中の妻や元交際相手の自動車にGPS機器を取り付けて、位置情報を探っていた行為が「見張り」に該当するかどうかが、争われていました。これについて、最高裁は、相手方の住居等の付近以外の場所でのGPSによる位置情報の探索行為は、「見張りには当たらない」と判断しました。
ストーカー規制法は「住居等の付近で見張りをする行為」が対象になりますが、その条文の定め方や趣旨からすると、相手の「住居等の付近」という一定の場所で、そこでの相手の動静を観察する行為が行なわれる必要がある… と判断しました。GPSを付ける時は「住居等の付近」まで出かけたとしても、その情報を得るのは付けた人の自宅だったり、GPSを付けられた方もそこから移動することも多いので、それは「見張り行為」ではない…という判断です。

道徳的には許しがたい行為のように思われるかもしれません。ただ、20年前にはGPS機器は一般的な存在ではありませんでした。法律ができた当時と比べて、今は、想定されない事態が起きているわけです。最高裁判所としては、「ストーカー行為」は刑事罰の対象となるので、処罰を視野に入れるなら、まず法律を改正する必要がありますよ、というメッセージを発しているのだと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇597回テーマ
「ストーカー規制法」
◇出演
 番組パーソナリティ 笠井信輔さん
 番組火曜日パートナー 水谷加奈さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士
 ※邦丸さんは夏休み