文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/584回テーマ 「新型コロナウィルスと安全配慮義務」編

2020年06月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

東京は緊急事態宣言解除から3週間が過ぎ、電車の混雑もだいぶ元に戻ってきたような印象です。第2、第3の波がやってくるという話もある中で、経営状況を見つつ、従業員の安全と健康を守らなければならない経営者の方は気が気ではないでしょう。そこで、本日の『くにまるジャパン 極』では、「新型コロナウィルスと安全配慮義務」というテーマでお話してきました。

労働契約において、使用者は労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務、安全配慮義務を負っています。もし、他社も対策していないから、うちも適当でいいか・・・と、何も対策をとらないで従業員にコロナ感染者が出てしまったら、「安全配慮義務違反」に問われる可能性があるでしょう。

過去に安全配慮義務違反を問われた裁判例の中でこういったものもあります。
サッカーの試合中に雷の直撃を受け、高校生がケガをした事件で、指導教員が「安全配慮義務違反」と認定された例があります。高校生はサッカー部員で、部活動の一環で大会に出場中でした。午後3時頃、豪雨となり、稲妻が光り雷鳴が轟く状況でしたが、4時半頃になると空が明るくなり、雷鳴も遠のいたので、指導教員は危険は去ったと考え、試合を行なったところ、そこに落雷があり、生徒は重篤な後遺障害を負ってしまいました。

その教員は、平均的なスポーツ指導者であるならば、雨がやみ、空が明るくなって雷鳴が遠のけば、落雷事故発生の危険性は弱くなると考えるのが一般的だから、自分もそうしただけ、安全配慮義務違反はありません、と主張しました。これに対し、裁判所は「平均的なスポーツ指導者の認識」は関係ない、当時の科学的知見に反する判断なので、違反、としました。コロナ対策に当てはめると、同業他社が対策してないからといって、科学的知見に基づく対応策を実施しないと「安全配慮義務違反」ということになります。

とはいえ、さほど難しく考えず、各省庁のホームページなど、公的機関が発表している予防策で十分足りるかと思います。たとえば建設業など、現場に行く必要があり、かつ3密が生じやすい職種では、国交省が「感染予防対策ガイドライン」また「建設現場『三つの密』の回避等に向けた取組事例」等を発表していますので、それに従えばいいと思います。経営者として、きちんと科学的知見に基づいたコロナ対策をとるのは、会社が従業員を大切に考えているよ、労働環境を改善しようと思ってるよ…という姿勢の表明です。これは長期的に見れば、従業員の士気に影響するなどメリットになっていくのではないでしょうか。

ホームワンには、労務に力を入れた企業法務部門があります。労務問題でお悩みの経営者の方、ぜひお気軽にご相談ください。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇584回テーマ
「新型コロナウィルスと安全配慮義務」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士