文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/581回テーマ 「賃料滞納と契約解除」編

2020年05月26日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

本日の『くにまるジャパン極』では、「賃料滞納と契約解除」というテーマでお話してきました。新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言発令の影響を受けて、大手企業が倒産というショッキングなニュースもあり、企業も厳しい経営を余儀なくされている中、事業や雇用を継続できるのか、不安が高まっていますし、実際、バイト先が潰れて、家賃が払えないという話も耳にします。借りている方はもちろんですが、滞納されたら大家さんも困ります。できれば契約を解除して、きちんと家賃を入れてくれる人と入れ替えたいと思うでしょうが、法律上、大家さんが一方的に契約解除することについては、厳しい条件が課されています。

家やアパートを借りる継続的な契約は、物を売り買いするような単発的な契約より、当事者間の高度な信頼関係を基礎としています。そのため、裁判になると、借主の契約上または法律上の義務違反が理由の解除について、その違反が、貸主との信頼関係を破壊するまでのものではないだろうと判断されると、一方的な解除は認められません。一般的には、1~2か月程度の滞納では解除は認められませんが、3か月以上に及ぶと、当事者間の信頼関係が破壊されたと評価されるようになり、契約解除が認められるケースが増えます。ただ、3か月は、あくまでも1つの目安で、これまでの裁判を見ても、滞納した期間以外に、賃料を払えない理由や、借主が以前にも家賃を溜めたことがあるか、といった状況を踏まえ、ケース・バイ・ケースで、信頼関係が破壊されているかどうかを判断します。つまり、1か月だけの滞納でも破壊を認め契約解除となる場合もあれば、3か月滞納でも信頼関係破壊を認めない場合もあります。

新型コロナの場合は、国が緊急事態を宣言し、休業要請や外出自粛という状況ですから新型コロナのせいで家賃が払えないのは、不払いに至った経緯にやむを得ない事情があるとして、信頼関係破壊を認めない事情の1つとして考慮されるでしょう。ただその事情は、借主が証明しなければならないので、証拠を集めておく必要があります。

もちろん、大家さんも家賃収入が途絶えると困るでしょう。とはいえ、あまり借主を追い詰めると、家賃の回収どころか、最悪の場合、工場設備など残したまま夜逃げや倒産という事態になりかねません。そうなった場合,賃料を回収できないだけでなく、建物内に残された物を撤去するために、裁判で明渡しを認めてもらい、強制執行の手続が必要となって、費用も時間もかかります。そのため、借主の方と、一時猶予や分割などを話し合うのが現実的でしょう。その際,公的補助として、たとえば、一定の期間、家賃相当額を代理納付してもらえる「住居確保給付金」という制度等の情報提供も良いと思います。

世界的には、コロナで経済的打撃を受けた事業者に対し、賃料の支払猶予に向け、法的拘束力のある対策を設けた国が多くあります。日本でも同様の対策が求められる段階にきていると思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇581回テーマ
「賃料滞納と契約解除」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士