文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/573回テーマ 「法律の経過措置」編

2020年04月03日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今週の『くにまるジャパン 極』は、3月31日の年度末でしたので、翌日から施行される民法改正についてお話してきました。債権や相続に関する法律が大きく変わることになりますが、4月以降もこれまでの古いルールが適用されるケースがあります。法律には「経過措置」というものがあって、ケースによって改正前のものを適用するか、改正後のものかを定めています。普通は、法律の最後に「附則」という形で補足されています。

「経過措置」がある理由は、将来法律が改正されることを知らないで、売買や賃貸借の契約を結ぶことが十分考えられるためです。もしその後法改正があり、新しいルールが適用されたとしても、そのことによって損することを防ぐことができます。当事者の方も、契約を結んだ時の法律が適用されると考えるのが普通です。そこで、今回の債権法改正では、古い法律の最終日までに売買や賃貸借などの契約を結んでいた場合は、ずっと変わらず改正前の民法が適用されることになります。

3月10日の放送でもお話ししましたが、交通事故の損害賠償にまつわる法定利率も、年5%の固定性だったものが、4月からは3年に1回利率を見直す変動制になり、まずは年3%と低くなるため、交通事故の損害賠償請求権のうち、逸失利益と遅延損害金に影響が出ます。逸失利益や遅延損害金については、事故が起きた日、法律的には不法行為日と言いますが、それがいつかによって、適用される法律が変わります。つまり、3月末までに事故が起きれば古い法律、しかし日付が変わった後に事故を起こすと改正法というわけです。逸失利益については、改正法が適用された方が金額が大きくなりますが、遅延損害金については、逆に金額が少なくなります。
なお、逸失利益については「症状固定日」、即ち症状が治ったか、それ以上治療しても改善の見込みが無くなった日に、逸失利益の請求権が発生するとの考え方もあります。この考え方だと、事故は法改正の前でも、症状固定は改正後という場合、逸失利益については、改正法が適用されることになり、被害者に有利になります。この点は、将来、争いになるかもしれません。

また、損害賠償請求の消滅時効についても法律が改正されています。たとえば、不幸にもひき逃げに遭ってしまい、犯人が逃げてしまって、損害賠償を請求したくてもできないという場合、3月末までは、損害及び加害者を知った時から3年、でしたが、4月からは5年に伸びます。これについては、4月1日の時点で3年の時効が完成していない場合は改正後の法律が適用される事になります。つまり2017年の4月1日に起きた事故の消滅時効は、その日に損害と加害者を知ったとしても、改正法が適用され、2020年4月1日が時効ではなくあと2年延長です。これは被害者保護の観点から、導入されたルールです。どちらの法律の適用対象かで、結論も大きく変わってくるので、ホームワンにご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇573回テーマ
「法律の経過措置」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士