文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/572回テーマ 「固定残業制度に潜む往復ビンタ現象に注意」編

2020年03月27日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

今週の『くにまるジャパン 極』では、前回に引き続き、中小企業の経営にまつわるテーマで、「固定残業制度」についてお話をしてきました。“固定残業制度”というのは、あらかじめ残業が出る事を想定し、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対して定額で割増賃金額を決めておいて、支払うシステムの事です。中小企業にとっては一見便利そうなシステムに見えますが、実はそうでもない部分があるので、経営者の方は注意が必要です。

固定残業代制度には、大きく分けて「基本給組込型」と「定額手当型」の2つがあります。「基本給組込型」とは、例えば「賃金は残業代込みで月30万」で、一方「定額手当型」は「基本給30万、時間外手当月5万」…と言うように、基本給とは別に手当として支給される場合のことを言います。この「基本給組込型」では基本給と残業代の線引きができないため問題があります。

“固定残業制度”が有効となるためには2つの要件があって、まず最初が「判別可能性の要件」というものです。文字通り、通常の賃金と割増部分とは判別できなければいけません。もし、このような状況で、残業代支払請求の訴訟を起こされた場合は、「判別可能性」がないと判断され、会社が残業代として支給していた部分までが、通常の労働時間に対する賃金の支払いと判断されます。つまり、会社側が、「基本給25万円、残業代5万円」と考えていたとしても、30万円が基本給と考えられ、法定ないし所定労働時間の労働に対する賃金と認められて残業代が未払いという状態となるということに加え、残業代計算の前提となる時間単価自体も25万円ではなく30万円となり、金額が増えることになります。二重のショックなので、私達は「往復ビンタ現象」と呼んでいます。

次に“固定残業制度”が有効になる2つ目の要件、「対価性の要件」というものです。対価というのは、その支払われる額が、実際の時間外労働に対して払われるべき残業代にきちんと見合っているか、ということです。仮に、10万円分の残業をしても、固定で5万円しか払っていないのでは,対価性の要件を満たしているとは言えません。先ほどの「往復ビンタ現象」は避けられるにしても、当然ですが未払い残業があったという扱いになって、不足分の支払い義務はあります。経営者側としては、実際にちゃんと時間外労働を把握して、割増賃金を計算し、きちんと払うのと大差なくなってしまうので、最近では、固定残業代制度のメリットはほとんどなくなっていると言われています。

ホームワンには労務に力を入れた企業法務部門があります。中小企業経営についてご相談がある方、お悩みをお持ちの方、ぜひご利用いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇572回テーマ
「固定残業制度に潜む往復ビンタ現象に注意」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士