文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/563回テーマ 「認知症と離婚事由」編

2020年01月24日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

今週の『くにまるジャパン 極』では、離婚についてのお話をしてきました。離婚が認められるための条件、法律用語では「事由」と言いますが、民法上で定められているのは以下の5つです。

・不貞行為
・悪意の遺棄
・生死が3年以上明らかでない
・強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
・その他婚姻を継続しがたい重大な事由

ここで、人生100年時代を迎え、考えて行かなければならない問題があります。それは「認知症」です。もし配偶者が認知症になってしまった場合,離婚は出来るでしょうか。「認知症」は「強度の精神病」に当てはまるでしょうか? 

「強度の精神病」とは、「精神障害の程度が、婚姻の本質である夫婦の相互協力義務を、十分に果たすことができない程度に達している場合」を言います。これは、必ずしも心神喪失の状況に達していることは必要ではないと考えられています。あてはまるのは,統合失調症,躁うつ病などの高度の精神病であり,アルコール中毒,ヒステリー,神経衰弱症,認知症などはあたらないことになります。

ただ、最近の裁判所は、認知症の方の生活に配慮しながら、離婚を認める方向にあるので、生活費や療養費の負担、配偶者に代わる保護者の存在、療養先の監護体制が十分に整っている…といった条件が揃っていれば、認められる可能性が高まります。つまり,相手の今後の療養や生活などについて、出来る限りの手を打って、ある程度において,前途にその方途の見込みがついた上なら「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、「認知症」の場合でも離婚が認められる可能性があるということです。

認知症の方の離婚手続きについては,認知症の重さによって変わってきます。重度の認知症の場合,話合いや調停での離婚合意は難しく,裁判離婚ということになると思いますが,重度の認知症の人の場合,訴訟行為能力もないということになりますので,後見開始の審判を申し立て、後見人を選任してもらうところから始まります。後見人がいれば、本人の代理で裁判を進めることができます。
もちろん認知症の程度が軽ければ、本人が意思を表明できるので話合い、調停、訴訟…と一般の離婚と同じ流れになります。

どんな困りごとにも、解決の手段はあるとお考えください。相手が認知症だからといって離婚を諦める必要はありませんし、別れたいけど相手が応じてくれなさそうだとか、離婚事由がなさそうだとか、離婚は無理だ…と自分で決めつけている場合でも、離婚できるケースもよくあります。一度、専門家である弁護士にご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇563回テーマ
「認知症と離婚事由」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士