文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/562回テーマ 「税制改正大綱」編

2020年01月17日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

今週の『くにまるジャパン 極』では,年末に発表された税制大綱,「税制」についてお話してきました。去年は消費税も上がって,増税ばかり目につきましたが,減税になるところもあるんです。

例えば,最近は離婚が増えて,「ひとり親」の家庭も増えていますが,これまではシングルマザーは最大35万円の所得控除,一方,シングルファーザーは最大27万円の控除でした。これを男女とも同じ基準にしようということになりました。男性の方が収入も多く,正社員で仕事も安定しているという社会通念の上に差をつけていたわけですが,現在では男性も非正規が増え,生活苦に悩む人も多い世相を反映しています。また,これまでは離婚した女性,夫と死別した女性だけが対象でしたが,新しい制度では未婚のシングルマザーも対象となります。未婚で産むにはそれなりの理由もありますし,生まれた子どもに罪はありませんから,減税枠が広がることになりました。
他にも,働いている間に積み立てたお金を,保険会社や信託銀行に運用してもらう確定拠出型年金の制度が変わります。確定拠出型年金は,掛金が所得控除として扱われるなど,税制上優遇されています。これまで積立期間は60歳までとなっていましたが,これが70歳までになります。できるだけ長く働き続けてほしいという,国の願いの現れですね。

課税措置が厳しくなった点で言えば,少し特殊な事例ですが,例えば,富裕層の方が海外に資産を移して税金逃れをするというようなことを防止する措置です。現在も海外の資産残高を毎年報告する義務がありますが,たとえば海外の不動産を売って,その代金を現地の銀行に入れ,そこから外国株を買うといった節税策を行った場合,その流れの記録を保管していなかった場合,課税措置が厳しくなります。

企業関連でも色々と変更になっています。現在企業の内部留保は463兆円とも言われてますが,このお金をベンチャー企業の投資に向けようとする優遇税制ができました。大企業が設立10年以内のベンチャーに1億円以上投資したらその25%を所得から控除するというものです。これは国内企業向けで,海外企業だと5億以上の投資が必要です。またベンチャー企業が個人投資家からクラウドファンディングで資金調達を考える場合,これまで設立3年以内の企業しか投資家への優遇措置がなかったのが,設立5年以内までに条件が緩和されました。より投資しやすい環境を整える狙いがあります。

他にも,会社の経費の取り扱いに注目すべき改正があります。経費にするには領収証が必要で,税法上は既にデータでもいいとされていますが,実際は改ざんされないよう社内規定を設けるなど色々対策が必要なため,結局は紙(原本)が大半でした。ただ最近,外部の会社が管理するサーバーにデータを直接保管できる環境が整ってきたため,自社の内部でもデータを保管しておけば領収証不要という制度ができます。

このように,税制は毎年変わりますが,それぞれの時代を反映しており,社会の変化が判ります。今後はこのような視点で注目してみてはいかがでしょうか。

得々情報 暮らしインフォメーション 
ホームワン法律相談室でした。
【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇562回テーマ
「税制改正大綱・税制はどんな風に変わるの?」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士