文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/561回テーマ 「自転車事故と保険義務化」編

2020年01月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

先週の『くにまるジャパン 極』では、自転車と交通事故のお話をしてきました。

2017年に「自転車活用推進法」が施行され、自治体では専用道路やシェアサイクルの整備、交通安全教育や啓発などを盛り込んだ「自転車活用推進計画」を策定しています。最近は都内でも、道路の端のほうに、自転車用のレーンが白い塗料で描かれるケースが増えてきていることにお気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか。自転車関連の交通事故の件数は減少傾向にあるのですが、残念ながら、歩行者との事故の割合はどんどん増えています。自転車は免許がいらない分、事故も気軽に考えがちですが、もし歩行者にぶつかって怪我をさせたり、亡くなられたりした場合、まず刑事責任、過失致死傷罪か重過失致死傷罪に問われます。よそ見程度で起きた事故なら過失にとどまるかもしれませんが、スマホを操作しながら自転車に乗っていて事故を起こした場合は、「重過失」とされます。過失と重過失の区別は難しいですが、ケースごとに、社会通念上相当…と認められる行動から、どれくらい逸脱しているかで決められることになります。

もちろん刑罰の重さも違っていて、過失傷害の法定刑は30万円以下の罰金または科料、過失致死は50万円以下の罰金です。一方、重過失致死傷罪だと5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金と重くなります。左手でスマホ、右手で飲物を持って電動自転車に乗っていて、歩行者にぶつけ死亡させたケースでは、裁判の結果、横浜地裁川崎支部が禁錮2年執行猶予4年の判決を出しました。

そのほかに民事事件として扱われることもあり、もちろん加害者は不法行為に基づく損害賠償責任を負います。損害額は、基本的には自動車事故の場合と同じ考え方に基づいて算定されますから、かなりの金額になることもあります。過去には9千万円を超える賠償額を認めた裁判もありました。9千万円はとても払えないという人がほとんどではないかと思います。自転車も慎重に乗らないといけません。

こうした動きをみて、自転車保険の加入を義務付ける自治体がどんどん増えてきています。東京都でも条例が制定されて、2020年4月から施行されることになりました。自動車保険や火災保険などの特約に、自転車事故による損害を保証する内容がついている場合がけっこうありますので、ぜひ確認してみてください。クレジットカードの付帯保険や会社などの団体保険、共済などにも付いている場合があります。また子育て中の方は、お子さんの自転車事故についてもきちんと補償されるかどうかもチェックしておきたいところです。未成年のお子さんが事故を起こして、その保護者がとんでもない金額を背負わなければならなくなったケースもあります。

今のところは自転車保険に加入しなくても罰則規定はありませんが、自転車保険の義務化が進んでいけば、加害者となっても、被害者になっても、それで何らかの補償が受けられることになります。ぜひ加入をお勧めしたいと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇561回テーマ
 「自転車事故と保険義務化」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士