文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/558回テーマ 「相続法改正-餅戻し免除意思の推定-」編

2019年12月23日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

先週の『くにまるジャパン 極』では、最近、相続に関する法律が変わったというお話をしました。
高齢化社会を反映して,配偶者の一方が先に亡くなり、残された方が,その後、かなり長い年月を1人で生きていかなければならないというような場合を想定した法律改正です。

これまでは、たとえば夫が生前、自分名義のマンションを妻に贈与した場合、遺産分割では「特別受益」となります。マンションの評価額が3000万円で、他に現金が6000万円あれば、持ち戻しと言って、妻に贈与したマンションの評価額3000万と,6000万の合計、9000万が遺産分割の対象となります。相続人が妻と子ども1人であれば,9000万を2で割って4500万ずつ、妻はマンションの3000万分をマイナスして現金1500万円、子どもが残りの現金4500万円を相続する、というルールでした。

しかしながら,妻としては、自分が長年家庭をきちんと切り盛りしてきたからこそ、マンションを買うことができた、という思いがあるかもしれません。また、こうした長年にわたる妻の貢献を思い、夫としては、自分が先に亡くなった場合、妻の生活を保障するため、住まいを贈与したいと思ったのかもしれません。特に年金収入しかない高齢者の場合は、住まいや預金は頼みの綱ですから、このような気持ちは大事にしたいものです。
そのため,婚姻期間が20年以上の夫婦に限られますが、どちらか片方が、贈与や遺言によって、もう一方に住まいを譲り渡した場合、その住まいは、遺産分割の対象としなくていいことになりました。つまり,遺産分割の際、残された配偶者はこれまでよりも取り分を増やすことが可能になったわけです。

実は以前から、贈与した不動産の金額を「持ち戻し」しなくていい、これを「持ち戻しの免除」というのですが,この夫の免除の意思が認められれば、それでOKとはなっていました。ただ、亡くなった後で夫の意思を探る作業はかなり困難が伴い、持ち戻しの免除が認められることが難しかったのです。でも今回の改正で、反対に認められるケースが多くなっていくのではないかと思います。

ポイントはいつ贈与されたのか。婚姻期間20年以上が経過した後で贈与が行われた、あるいは遺言が作成されていなければなりません。そのため、結婚20年以上経った後で夫が亡くなられても、贈与が行われたのが18年目に行われていたとしたら、2年足りないので、適用されません。また、法改正の実施日との関係で、今年の7月1日以降になされた贈与等でなければなりません。しかし、継続して20年という定めはないので、一度離婚してまた結婚したといった場合は、トータルで20年をクリアしていれば問題ありません。

ただ、あくまで推定ですので、具体的な事情によってはこの推定が破られ、持ち戻しをしなければならなくなるケースも十分考えられます。亡くなってからでは手続きもいろいろ大変ですので、贈与や遺言を検討されている方は、ぜひホームワンにご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇558回テーマ
 「相続法改正-持戻し免除意思の推定-」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士