文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/529回テーマ 「管理監督者」編

2019年05月29日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の山田です。

昨日の『くにまるジャパン極』では、働き方改革に関連して、「管理監督者」というテーマでお話してきました。先日の放送でも、中原弁護士が法律で労働時間の上限が決められたけれども、一部、たとえば「管理監督者」は規制の適用外とお話したと思います。この点をもう少し詳しくお伝えしました。

従業員の中でも「管理監督者」の立場にある人は、いくら残業しても残業代はもらえません。この場合の「管理監督者」とは、「経営者と一体的な立場にある人」。いわば「社長の片腕」みたいな人をいい、単なる管理職は含まれません。課長とか部長といった役職名では判断せず、その人の実際の仕事内容、権限、待遇が、管理監督者というに相応しいかどうかで判断します。

この件で思い出すのが、あるファストフード店で起きた事件です。このチェーンでは店長を管理監督者にしていました。店長ですから、権限はそのお店一店舗のみで、店舗限定のバイトは採用できても、正社員の採用権限はなく、部下の正社員の昇進に意見は言えても決裁権はありません。経営者と一体とは言えない状況でした。自分が現場に入らざるを得ないことも多く、そのため60日以上連続勤務、100時間以上の残業もあり、こういう実態をみると、労働時間の管理面でも、その店長に裁量権があったとは思えません。店長もランク分けされ、S・A・B・Cの4段階中、最低のCランク店長の場合はその下のリーダークラスより年収も低かった。当然ですが、裁判所は店長を管理監督者とは認めませんでした。

改めて管理監督者の要件をまとめますと、3つあります。まず人事や経営の管理面で経営者と一体的な立場にあること。これは、例えば肩書は「東京支店長」でも、東京支店のトップだけではなく、近隣の千葉・横浜・埼玉の支店管理も任されているとか、あるいは支店の従業員が何百人規模で、独立予算や人事権をもっている場合です。他にも、採用について最終段階で意見を言えて、それが合否を左右するという場合も、「経営者と一体的な立場」と考えられると思います。

2番目は、自分の勤務について裁量権があって、誰もそれに文句を言えない、とやかく言われないような実態があることです。先ほどの例で、「60日間連続勤務」をあげましたが、裁量権があれば、もう少し人間を増やすとか、リーダーなしでも店舗が維持できるシステムを考えるとか、他の部署から応援を回してもらうとか、いろいろ打開策がとれるはずです。それができないというのは、即ち、管理監督者とは言えない、と裁判所は考えたのでしょう。

3番目の条件は、その地位、役職にふさわしい待遇を受けている事です。ただ、他の従業員の2倍の賃金があっても、2倍働いてたら、それは意味がないことになります。例えばある裁判で、会社は支店長の基本給は21万円、資格手当2万円、通勤手当、お客様評価給の合計で、お客様評価給は最高70万円、合計では100万円近くになるので役職にふさわしい給料だと会社側は主張しました。これは一見、もっともそうですが、実はお客様評価給の最低額は3万円。このお客様評価給を増やそうにも、部下の動きが悪ければ、結局、部下をサポートしたりなどして、自分が長時間働かなければいけないため、普通の労働者とあまり変わらないわけです。この3要件がすべて揃わないと「管理監督者」とは言えませんので、実際には、ほとんどのサラリーマンは、当てはまらないと言えるかと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇529回テーマ
 「管理監督者」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士