文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/524回テーマ 「無罪判決・トラックと自転車の衝突死亡事故」編

2019年04月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

今日は、先日、名古屋地裁が出した無罪判決で話題となったトラック運転手の自動車事故についてお話してきました。事故の概要は、名古屋市の国道で自転車を運転していた男性が大型トラックにはねられて死亡したというものです。

この事故のポイントは2つあり、道路における自転車の法的な位置づけと、もう一つは、自動車の運転に伴う注意義務というものです。

まず1つ目の道路での自転車の位置付けですが、自転車は道路交通法で「車両」として扱われ、車道を走るのが原則です。大雑把に言えば、自転車の法律上の扱いは自動車と同じですが、一般的な大きさや構造、つまり普通の自転車であれば、「自転車歩道通行可」の標識がある場合など、例外的に歩道を通れるということになります。つまり、歩道はあくまで歩行者優先、自転車は車道寄りの部分を徐行しなければなりません。徐行は、止まろうと思えばすぐ止まれる速さで走る事で、だいたいブレーキをかけて1m位で止まれるのが目安です。人通りの多い歩道を、凄いスピードで駆け抜けて行く自転車を見たことがある方もいらっしゃると思いますが、あれは道路交通法違反にあたり、罰金刑も定められています。大変危険な行為ですから、絶対にやめてください。

事故の方に話を戻しますと、今回の事故では、自転車は車道を走っていたということですので、自転車側に非はなく、トラック運転手に無罪判決が出たのはおかしいような気もします。ここで2つ目のポイント、自動車の運転に伴う注意義務を怠っていなかったという問題が出てきます。今回の裁判では、ドライバーは「自動車運転過失致死」という罪に問われましたが、ここでいう「過失」というのが、つまり、「注意義務」に反していた、という意味になります。「注意義務」とは、大まかには、周囲に気を付けて運転してね、ということですが、もう少し法律的にいえば「運転している時のその状況で起こり得る危険な結果を予測すべき義務」ということです。

この視点からこの事故の具体的な状況を見ると、トラックは片側二車線の左側を走行中、路肩部分を後ろから走って来た自転車に気づかず接触しました。  普通はそこを自転車が通る可能性を考慮すべき状況ですが、今回の現場は車道の脇に高速道路でよく見かける、背の高い防音用の壁があり、その向こうに歩道が整備されています。交通量が多い上、路肩部分は幅70㎝程度しかなく、一般道と言うよりは、高速道に近い感じの道路でした。

つまり、物理的に自転車が走る事は考えにくく、スペース的にも普通は通らないだろう、という状況のようです。裁判所も、その狭い隙間を自転車が走ってくる事は想定できず、ドライバーに予測すべき注意義務はない、と判断したようです。

そのような状況なら、確かに自転車が通るのを予測しなさいとドライバーに要求するのは酷かもしれません。でも自転車側にしてみれば、法律上認められている通行だから…、というのが議論の内容ですが、個人的にも難しいところだなという印象です。いずれにしても、自転車に乗る皆さんも、危険が感じられる道路は走らない、という自衛は必要だと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇524回テーマ
 「無罪判決・トラックと自転車の衝突死亡事故」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士