文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/521回テーマ 「民法改正・配偶者居住権」編
2019年03月26日
弁護士法人 法律事務所ホームワン
代表の中原です。
本日の『くにまるジャパン 極』では、リスナーの方から頂いた相談を元に、「民法改正・配偶者居住権とは」というテーマでお話ししてきました。
頂いた相談というのは、ご高齢の女性からの相談です。ご主人が亡くなられて、相続する財産に、預金はほとんどなく、持ち家だけという状況でした。しかし、不仲な一人息子から、持ち家を売って遺産の取り分をよこせ、と迫られて困っているという内容でした。
まず、こういう場合は、奥様と息子さんが相続によって、土地と建物を共有します。2分の1ずつ分けることになりますが、その2分の1だけ持っている状態でも、奥様はその家に住み続けることが可能です。
意外かもしれませんが、この話と似たようなケースで裁判になったことがあります。別居している息子さんが、持ち家に暮らす母親に対して、自分の相続分の割合の「賃料」を請求しましたが、母親に支払いの必要はないという判決が出ています。
息子さんとしては面白くないでしょうが、これは比較的よくあるトラブルです。例えば、土地・建物で4000万円の価値がある場合、息子には2000万円分を相続する権利がありますから、母親に対し、家を売って2000万円よこせ、と要求してくるわけです。
この場合、一番簡単なのは、母親が家の所有権を2000万円払って息子から買い取ることですが、息子にポンと2000万円を払って、さらにその後の生活も続けていくことは、なかなか難しいはずです。
これまでは、泣く泣く住み慣れた家と土地を売り、お金に換えて半分を息子に渡さざるを得ないのが当たり前でした。しかし、民法が改正され、母親が住み続けられる権利が保護されるようになりました。
認められるようになったのは「配偶者居住権」という権利です。これで、持ち家の「所有権」と「居住権」を分け、母親は「居住権」を、息子は「居住権の負担がついた所有権」を相続する、ということができるようになりました。
息子は所有権を取得したとはいえ、居住権付きの建物なんて売却しにくいですし、もし売却されても、居住権を登記しておけば、買主に対抗して住み続けることができます。
ただ、問題点もあります。例えば、家はあって家賃は不要、でも生活費がない場合、どうすればいいか。現実的な方法は、その家を貸し出して家賃収入を得て、安いアパートで暮らす…といったものが考えられますが、これを行なうには所有者である息子の承諾が必要です。息子がこれを拒否すれば、母親は家を貸し出すことができなくなります。
他にも、住み続けた後、高齢になって施設に入りたい。そこで家を売って費用を捻出したいと思っても、難しくなります。配偶者居住権は、あくまで配偶者が現実に住み続けられる権利を保証するだけなので、他人に売ったりすることはできません。
遺された母親が、家と生活費の両方を確保することは、やり方次第で何とかできる可能性もあるので、それはまた別の機会にお話しできればと思います。
【出演情報】
◇日時
毎週火曜 9:45~
◇放送局
文化放送(関東エリア)
◇番組名
『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇521回テーマ
「民法改正・配偶者居住権」
◇出演
番組MC 野村邦丸さん
番組パーソナリティ 鈴木純子さん
法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士