文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/481回テーマ 「司法取引とは?」編

2018年06月19日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の中原です。

本日の『くにまるジャパン 極』では、6月1日に施行された、改正刑事訴訟法の「司法取引」制度についてお話ししてきました。

司法取引とは、簡単にいえば「捜査に協力することで、刑を軽くしてもらえる」という制度です。
具体的には、逮捕された被疑者や、裁判を待っている被告人が、共犯者などの「他人の刑事事件」の解明に役立つ供述をしたり、証拠を提出するなどの協力を行った場合、検察官がその見返りとして、その被疑者・被告人を不起訴にしたり、求刑を軽くするといった合意ができる制度です。

ここで「他人の刑事事件」と強調したのは、自分の刑事事件については使えないからです。
欧米では自分の事件にも使えるのですが、日本の場合は他人の事件に限られています。もちろん、自分の事件でも捜査に積極的に協力すれば、有利な情状として刑が軽くなる可能性もありますが、法律で保証されているわけではありません。

また、どんな犯罪にも使えるわけではなく、適用されるのは「特定犯罪」に限られています。代表的なものでは、オレオレ詐欺、独占禁止法違反、脱税などの経済犯罪、また薬物犯罪や銃器犯罪などが対象です。一方、適用外なのは傷害罪や性犯罪など、身体的・精神的被害を伴う犯罪です。

つまり、司法取引制度は、企業や暴力団などによる組織犯罪が念頭に置かれています。組織犯罪の捜査においては、末端の人間の罪を軽くする代わりに、共犯者や首謀者の事件を供述させれば、捜査が容易になり、犯罪の全容が解明しやすくなるだろう、と言われています。

具体的な司法取引の流れは、一般的には検察官から、司法取引に応じるとどんな見返りがあるかという説明があり、協力を求めてくることが多いと思いますが、場合によっては被疑者自ら「情報提供するから罪を軽くして」と求めることもあり得ます。

そして、最終的に協議が成立した場合、検察官と、被疑者もしくは被告人、弁護士が連署した合意書面を作り、それを証拠として使うことが義務付けられています。

もし、被疑者が提供した情報が大した情報ではなかった場合、協議が成立しないことも考えられます。その場合、検察側がその情報を証拠として使うことはできません。そうしなければ、被疑者は情報だけを吸い上げられて、刑は重いままという不平等なことになってしまうためです。

当然、刑を軽くするために被疑者がウソの情報を提供する可能性も指摘されています。そのため、もし供述がウソだった場合は虚偽供述罪として罪に問われ、5年以下の懲役というかなり重い刑罰が定められています。

また、司法取引には弁護士の関与が必須です。これは被疑者が検察官にそそのかされないように保護する目的もありますが、その一方で、弁護士は被疑者に虚偽の証言をさせたり、虚偽の証拠を提出してはいけないという規定があるので、それが冤罪防止にも繋がるからです。

ただ、弁護士は捜査資料を見られないので、被疑者の供述が本当かどうか、100%見抜けるかどうかはわかりません。そのため、まずは捜査機関がしっかり裏付け捜査を行う、というのが、司法取引制度の大前提になると思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇481回テーマ
 「司法取引とは?」
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士