文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/471回テーマ 「新社会人月間② 歓迎会でのトラブル」編

2018年04月10日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

4月は門出の季節ということで、「新社会人向け月間」と称して、新しく社会人になられた皆さんが出会うさまざまな場面を、法律の観点から見るとどうなるのかをお話ししています。2回目の今日はこの時期に多い「新人歓迎会」にまつわるテーマでお話ししていきます。

まず、歓迎会などの飲み会への参加は強制できるかという点についてです。われわれ昭和世代には、歓迎会や忘年会など、職場で開かれる飲み会には参加するのが当たり前、という感覚を持っている人も多いと思います。

これを法律の観点から考えると、もし歓迎会が会社の公式行事で、社員の親睦を深めるのが目的であり、「勤務時間内」に行なわれるということであれば、社員に対して参加を義務付けることは可能だと思います。
仕事の一環ですから、費用は経費として会社が負担するでしょうし、勤務時間ですから賃金も発生し、時間が長引いたら残業代もつきます。

でも実際のところ、ほとんどの場合は、飲み会が開かれるのは仕事が終わった後でしょうし、法律的な義務はなく自由参加なのが基本でしょう。会社から強制することはできませんし、社員のほうから残業代を請求することもできません。

しかし、例えばその飲み会に参加しなければ、人事評価や今後の仕事に影響が出るなど、何らかの不利益を受けると考えられる場合、また、社長や上司から「必ず出ろ」と指示があって、他の社員も全員参加するなど心理的な強制力が働いている場合、こうしたケースでは、飲み会も業務として評価される可能性があります。

ただ、そこまで厳しい雰囲気ではなく、単に断りづらいという程度のものなら、気持ちの問題なので強制とは言いにくいです。法律的にも、「断りづらいので嫌々参加した」というだけでは、残業代を請求するのは難しいと思います。

続いて、歓迎会などの飲み会には付き物の「お酒」についてのお話しです。先にも述べたように、参加については強制できるケースがありますが、飲酒は絶対に強制することはできません。お酒を飲むことが仕事だとは認められないからです。

アルコールハラスメントという言葉もありますが、飲酒を強要するのは法律上、「強要罪」に当たり、それでもし急性アルコール中毒になってしまったら「傷害罪」になる可能性もあります。命に関わる場合もありますので、気をつけなくてはいけません。

過去に、酒が弱い部下に「酒は吐けば飲めるんだ」と言って、飲酒を強要した行為が問題となった事件がありました。第一審の地方裁判所では「その程度では違法ではない」とされました。しかし、二審の高等裁判所では逆転で「違法」となったのです。この事件に関しては、第一審の裁判官の感性は時代遅れかなという感じがします。これがもし、歓迎会や忘年会などの会社の飲み会で、自由参加の場合でも、「会社の業務の延長」と考えられるような事情があれば、会社が責任を問われる可能性があります。
最近では、飲み会の場でのセクハラ行為で、会社の責任が問われる裁判例も多いので、お酒についてもほどほどに、歓迎会を楽しんでいただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇471回テーマ
 「新社会人月間② 歓迎会でのトラブル」
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士