文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/461回テーマ 「嫌煙権を考える」編

2018年01月30日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

2月が近づき、平昌オリンピックに関する報道が目立つようになってきました。日本でも、2020年の東京オリンピックに向けて様々な準備が行なわれていますが、そのひとつである「受動喫煙対策」は、たびたび議論の対象になっています。そこで本日の『くにまるジャパン 極』では、「嫌煙権を考える」というテーマでお話をしてきました。

「嫌煙権」には法律的な定義というものはありません。一般的には、煙草を吸わない人が受動喫煙を拒否できる権利、つまり「他人の吸った煙草の煙を吸わない権利」のことをいいます。

喫煙に関係する法律としては、健康増進法の第25条に「多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」とあります。また労働者の健康や安全を守るための法律で,労働者安全衛生法という法律にも同じような規定があり、つまり、公の場所や職場では、煙草を吸わない人を、他人の煙から保護するよう努力しなさい、という決まりになっています。
努力義務に過ぎないので罰則はありませんが、法律としては、煙草は健康に良くないので、吸わない人を吸う人の煙から可能な限り守りましょう、という立場に立っています。

健康増進法については、東京オリンピック開催を見据えて、厚生労働省が、「公の場所は全面禁煙にして、例外として、30㎡以下の飲食店に限って喫煙を認める」という内容の改正を予定していました。
しかし、与党から「飲食店が潰れる」と大反対が起きて、喫煙可の面積を150㎡まで広げるという代替案が検討されているという話もあり、結局は「骨抜き」にされてしまいそうな雲行きです。

労働安全衛生法については、改正法の話は今のところありません。
ただ、区役所の職員が、職場での受動喫煙を理由に30万円の損害賠償を求め、5万円の賠償義務が認められた判決や、化学物質過敏症の人が健康被害を訴えて700万の支払いで和解が成立したり、職場での22年の受動喫煙が原因で肺がんになったとして労災認定が認められたりした事例はあります。

公の場所や職場ではなくても、マンションで下の階の人がベランダで煙草を吸い続け、健康被害を受けたとして裁判を起こした事件がありました。判決では4か月半分の被害として、5万円の賠償を命じています。マンションでの喫煙トラブルは増えていますし、またコンビニが店の外に喫煙スペースを作った所、通行人から「嫌な思いを強いられる」と裁判を起こした事件もあります。

成人男性の喫煙率は、ピークの1966年で83・7%、これが去年は28・2%まで減少しています。かつては、受動喫煙がお互い様だったので、通常我慢できる範囲内であれば損害賠償をしなくてもいい、という判決もありましたが、最近では、通用しにくい論理になりつつあると思います。

いずれにしても、子どもや妊娠中の方、また心臓や呼吸器に病気を抱えている方には煙草の被害は深刻です。そうした人たちの前では、絶対に吸わないことを、心がけていただきたいと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇461回テーマ
 「嫌煙権を考える」
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士