文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/430回テーマ 「隣人トラブル 騒音」編

2017年06月20日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

本日の邦丸ジャパンでは,騒音や悪臭にまつわる隣人トラブルについてお話ししてきました。先日,報道で,自宅の庭でバーベキューをしていたら,「うるさい」という理由で隣の人に刺され,亡くなられた事件がありました。これは極端な例ですが,騒音や悪臭で近隣とトラブルが起きるというのは,けっこう身近な話です。

国土交通省の調査では,マンショントラブルで最も多いのは「居住者間の行為,マナーをめぐるもの」で,その中でも「生活音」が34.3%でトップとなっています。たとえば上の階でカーペットからフローリングに代えた,とか子どもが走り回ったり飛び跳ねたりといった原因によって,下の階の住人が被害を訴えるというものが多いんですね。

法律的には,騒音や悪臭があまりにヒドく,法律に違反する,といった場合,被害を金銭に見積もって支払いを求める「損害賠償請求」,あるいは,騒音などの基になる行為そのものを止めさせる「差止請求」といった方法を採ることができます。
ただ音やニオイは,受け取る側の個人の感受性によるところが大きいです。
そのため,この線を越えたら全部法律違反,という基準は設けられていません。
また,一人が不快に感じるからと言って,すぐに差止や損害賠償が認められてしまうと,社会は成り立ちません。そこで,音やニオイの問題については「一般生活上,受忍すべき限度を越えているかどうか」という観点から判断します。

辞書には「迷惑や損害をこうむっても耐え忍んで我慢すること」といったことが書いてありますが,裁判では,一般的な社会生活上,ガマンすべき限界を超えると,「受忍限度を越えた」として違法となる「受忍限度論」という枠組みが用いられています。
受忍限度は事案ごとに判断するしかありませんが,騒音の種類,大きさ,時間帯,騒音の内容・程度,騒音発生以降の当事者間のやり取り,経緯騒音を回避する措置の有無・効果,などを総合的に考慮します。
やはり受け止め方は人それぞれで,加害者の対応がよければ被害者の気になる程度も軽くなる,と考えているわけです。

騒音の程度については,自治体ごとに「環境基準」や「環境条例」といった形で定められています。たとえば,ある自治体では,住居専用地域では,音源の存在する敷地と隣地の境界線における音量を,午前8時から午後7時までは50db,午後7時から11時までは45dbといった基準を設けています。
裁判では,こうした数値が指標となって,受忍限度の判断がなされる傾向があります。
ただ,音の大きさを調べることは難しいと思いますので,「騒音」そしてお住まいの自治体の名前で検索していただくと,代表的な生活音が一般的に何db程度にあたるのか調べられます。
たとえば「子どもの駆け足」は50~66dbと書かれています。
生活音に対する理解が深まれば,隣人への配慮も深まり,話し合いで解決できることも多くなるのではないでしょうか。冷静に話し合って,それでもうまく行かないときは,弁護士など専門家にご相談されるのも,ひとつの手段ではないかと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇430回テーマ
 「隣人トラブル 騒音」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士