文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/429回テーマ 「死後離婚」編

2017年06月13日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

きょうは最近よく耳にする「死後離婚」を取り上げました。同じ墓に入りたくない…とか,向こうの親の面倒を見たくない…といった理由で,夫の死後に離婚する女性が増えているそうです。
この「死後離婚」というものに,法的な定めはありません。
そもそも民法では,夫婦のどちらかが亡くなったときに,婚姻関係は終了すると定められています。ですから法律的には「死後離婚」という言葉そのものが成り立たないわけなんです。

いま盛んに言われている「死後離婚」は,配偶者が自分よりも先に亡くなった場合,「姻族関係」を終了させる手続きのことを指しています。
「姻族」は,たとえば妻から見て,夫の両親や兄弟などを言います。婚姻関係はどちらかが亡くなれば終わりますが,姻族関係は自動的に終わることはなく,舅,姑との関係は,夫の死後も放っておけば続いていきます。そこで「姻族関係」を終わらせたいと思ったら,そのための別の手続きが必要になってくるわけです。

「姻族関係」を終わらせないと,舅,姑が健在なうちに夫が亡くなってしまったら,義理の両親を世話しなければならない,「扶養義務」が生じることがあります。扶養義務というのは,親が子の面倒を見る場合によく使われる言葉ですが,法律的には,自分の貯金や仕事だけでは暮らしていけない,あるいは働けない人への生活上の援助をする義務を指します。
基本的に,姻族関係には扶養義務はありませんが,特別な事情がある場合,姻族関係を含む,「三親等内の親族間」に扶養義務が生じることになります。
「特別な事情」というのは,たとえば,兄弟姉妹や子など,他に親族がいなかったり,あるいはずっと両親と同居してきて夫が両親の面倒を見てきた場合などです。こうした場合,未亡人となった妻に扶養義務が出てきます。
また,民法には親族間の助け合いを定めた条文があって,「親族」には「姻族」も含まれます。やっぱり未亡人は,舅や姑を助けなければいけない,ということになります。

その扶養義務をなくすために,「死後離婚」,正式には「姻族関係終了届」というものを提出し,姻族関係を終わらせます。これは,本人の意思で自由に決められますから,夫の両親の同意や了解は必要ありません。その時,旧姓に戻したければ,これも届けを出せば戻すことができます。また夫の遺族年金を受け取っている場合も,継承手続を行えば引き続き受給可能,遺産相続した場合も,返却する必要はありません。
死後離婚は夫が亡くなった後の夫のご家族との問題です。様々な家庭環境があり,また,近年,老老介護の問題などもあって,なぜ死後離婚という言葉が世間で取り上げられているのか,わかるような気もしますね。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇429回テーマ
 「死後離婚」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士