文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/425回テーマ 「ペットと法律」編

2017年05月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

今日のくにまるジャパン極では「ペットの法律問題」についてのお話ししてきました。
日本の家庭で飼われている犬猫はおよそ2千万頭と言われ,これだけ数が多いと当然,様々なトラブルも生まれやすくなります。
今年の3月には,八王子で生後10カ月の赤ちゃんが,祖父母の家で,ゴールデンレトリーバーに噛まれ,命を失うと言う,何とも悲惨な事故があったことは,ご記憶の皆さんも多いかと思います。これは身内の事故ですから,法律問題にはなりにくいですが,もし自分のペットが他人を傷つけたとしたら,どうなるでしょう。

例えば,犬の散歩中に,近くの人に噛みついてケガさせたという場合,犬は責任を負うことができませんから,民法では,「動物が他人にケガをさせた場合,占有者が責任を負う」,つまり飼い主が賠償責任を負う,と定められています。
ただ,状況によっては,やむを得ない場合もあるので,飼い主が責任を負うのか,負わなくていいのかは,飼い主が「相当の注意」をもって管理していたかどうかをもって判断されます。
具体的な事例としては,犬の散歩中,飼い主が放し飼いにしていて事故が起きた場合,これは「相当の注意」をしていなかったということで,原則として飼い主が賠償責任を負う判断がされます。リードを使っていて事故が起きた場合でも,「相当の注意」をしていたとは認められないこともありますので,注意が必要です。
裁判では,動物の種類,人を襲う癖があるか,どう管理していたかなど,総合的に見て判断されますが,多くの場合「相当の注意」を払っていたとは認められず,飼い主に厳しい判断が出ているのが現状です。

一方で,ペットが被害を受けた場合に,慰謝料が認められるかという点についてですが,犬は,法律的には「モノ」と考えられているため,原則,慰謝料は認められません。慰謝料とは,被害者の精神的苦痛に伴って権利が生まれるもので,「モノ」には精神的な苦痛は発生しないと考えられるからです。
ただ,最近はペットも家族の一員として考える方も多いので,こういった現状を踏まえ,交通事故で重い障害を負った場合や死亡した場合に慰謝料を認めたケースもあります。
例えば,名古屋であった裁判では,犬が交通事故で重い障害を負ったとして慰謝料40万円の支払いが認められました。ただ,飼い主がこの犬にシートベルトをさせていなかったということで,過失相殺として慰謝料の金額が1割減らされています。犬の安全面でも賠償面で考えても,犬にもシートベルトをしてないとダメということです。

そして,最後に,ペット禁止のマンションなどで,大家さんに黙って犬猫を飼っていた場合に賃貸借契約が解除出来るのかという問題をご紹介します。明らかな契約違反ですが,法律上,借りている側にも「住む権利」が認められています。賃貸借契約の解除については,信頼関係が破壊されているかどうかという点が要件となります。
具体的には,ペットの種類や飼育状況,また近隣住民への迷惑が発生しているかどうか等の状況から,信頼関係が破壊されているかどうかを判断されるので,ペットを飼っていることがわかったからと言って,大家さんが「直ちに契約解除,明日出て行け!」…ということは,法律的にできないということです。
これには大家さんも,何だか可哀相な気がしますが,借主が部屋を退去する際には,ペットが傷つけた床や壁の修理,部屋全体のニオイの除去などは,通常の契約の範囲では起きるはずのない損害と考えられるので,すべて借主の負担とすることが出来るということになります。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇425回テーマ
 「ペットと法律」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士