文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/417回テーマ 「プライバシー権VS表現の自由」編

2017年03月21日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

今日はインターネットで飛び交う「個人情報」についてのお話です。
実は,ある人が,そのインターネットの検索サービス会社,「グーグル」に対し,自分自身のプライバシーに関する記事が,検索結果に表示されないよう,削除してほしい…という訴えを起こしました。

こうした訴えは,「忘れられる権利」と呼ばれ,ネット社会が発達した今,とても注目されている権利です。
裁判上は「プライバシー権の侵害を理由とした差止請求」とか「損害賠償請求」をしていくことになります。「プライバシー権」は,「私生活に関する情報を公開されない自由」とか「自分の情報をコントロールする権利」と考えられています。
例えば,自分の私生活に関する記事が雑誌に掲載され,それが発売されそうなとき,プライバシー権に基づいて,出版・販売をやめてください,と出版社に請求することが「差止請求」で,私生活がバレバレになって,心が傷ついたときに,その心の穴を金銭で埋め合わせてくれ…と請求するのが「損害賠償請求」になります。

先日,最高裁で出た判決の中で,「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は法的保護の対象となる」と述べていますが,結論として,この訴えは認められませんでした。検索結果の提供は,グーグルの「表現行為」で,ネット社会の情報流通基盤として役割は大きい,と考えた上で,削除はグーグルの表現の自由を制約すると共に検索結果の果たす役割までも制約することに配慮したためです。

しかし,今後一切削除は認められなくなったということではありません。プライバシーに関する記事を公表されない法的利益と,記事が掲載されたウェブサイトのURL情報を含む検索結果を提供する諸事情を天秤にかけて,前者が後者を優越することが明らかな場合,検索結果からそのURLを削除するよう請求できる…という基準を裁判所は設定しました。
つまり,今回は後者の方が重かった,ということですが,実はこの事件は「児童買春で逮捕された」という情報が問題になっており,これは社会的に避難され禁止されているものですから,今なお公共の利害に関する事柄である…と判断されたのです。また、検索結果も検索を行う時,削除を要請している人が住む都道府県や,その名前を入れないと出てこないので,プライバシーに関する事実が伝わる範囲が限られていることが重視されたようです。

なお,ネット上の書き込み削除依頼も法律事件の処理に当たるので,もし仮に,弁護士でない人が代行すると,「非弁行為」という法律違反で,無効となることもありますので,ご注意ください。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇417回テーマ
 「プライバシー権VS表現の自由」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士