文化放送『くにまるジャパン 極』に小杉直樹弁護士が出演/405回テーマ 「忘年会のトラブル」編

2016年12月20日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の小杉です。

今年も残すところわずかとなりました。忘年会シーズン真っ只中,今夜も忘年会という方,たくさんいらっしゃることと思います。
忘年会など職場の飲み会は,以前は参加するのが当たり前で,ほとんど義務的に出席していたものですが,実際のところ,法律的には賃金が出ない限り,参加を強制することはできません。
社員の親睦を深めるため,会社の公式行事として,勤務時間中に忘年会を行うということなら,会社として,社員に対して「忘年会に参加すべし」と命令するのは可能だと思います。いわば仕事の一環としての忘年会ですから,経費は会社負担。勤務時間内なので,それに応じた賃金も当然出るわけです。時間が長引いたら,残業代も支払う義務があります。ただ,そんな夢のような忘年会を行う会社はあまりないでしょう。
飲み代は割り勘,残業代も出ないということならば自由参加となり,法律的には出席を強制することはできませんし,不参加の人に不利益が出るようなことがあってもいけません。
逆に,参加しないとボーナスの査定が悪くなる,など,何らかの不利益が出る場合は,会社から命令がなくても,「強制参加」と言うことができます。
上司に言われたから,断りづらい…という程度なら,気持ちの問題なので,「強制された」とは言えないでしょう。法律的にも残業代を請求することは難しいと思います。

一方で,先ほどお話しした通り,残業代を支払い忘年会への出席を強制することは可能でも,酒を飲め! 俺の酒が飲めないのか!と無理やり飲ませるというような,飲酒の強制は,法律的には当然ご法度です。飲酒は仕事ではありません。忘年会じゃなくても,これは「強要罪」という犯罪です。飲んだ結果,もし急性アルコール中毒にでもなってしまったら「傷害罪」になる可能性もあります。こうなると命の問題です。
実際,酒が弱い部下に上司が「酒は吐けば飲めるんだ!」と酒を注いだ行為が問題となった裁判もありました。
また,たとえ自由参加であっても,「職場の」忘年会であれば,業務に関連しているということで間違いないと思います。そこで上司が酒を無理やり飲ませるといったトラブルを起こせば,会社として責任が問われる可能性もあります。会社の社風で,飲酒の強制が当たり前,みたいな所もあるかもしれませんが,アルコールの問題については,時代の流れで,厳しい考え方に変わってきています。
皆様の職場でも,節度を守って,楽しい忘年会,新年会をお楽しみいただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇405回テーマ
 「忘年会のトラブル」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 小杉直樹 弁護士