文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/401回テーマ 「預金を遺産分割の対象に?」編

2016年11月22日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

本日の『くにまるジャパン 極』では,相続手続において,預金の取り扱いが変わるかもしれない,というお話をしてきました。

現在は,預金は遺産分割の対象にならない,ということになっています。
預金というのは,我々が銀行に預けたお金ですから,これを返してくれという権利=返還請求権があります。
判例では,分割できる債権は,相続分に応じて相続人に直接帰属する,となっているので,分割する必要がない,すなわち遺産分割の対象にならないというわけなのです。

ただ,よく遺産の分け方でA銀行の預金は長男に,B銀行の預金は二男にという話をよく聞くと思います。これがダメというわけではありません。実際はそういった分け方が主流でしょう。預金が遺産分割の対象にならないとは言っても,相続人全員で,預金を遺産分割の対象に含めることについて「合意」できていれば可能になります。

ただ,「相続人全員の合意」という点がポイントです。つまり,相続人のうち誰か一人でも反対したら,対象とはなりません。

具体的な事例で考えてみると,お父さんが亡くなって,相続人が子ども二人しかいないとします。遺産は預金1000万円だけです。ただ,長男は,生前に父から1000万円の贈与を受けていました。この場合,どのように相続するのが良いのでしょう。長男が生前に1000万円受け取っているなら,下のお子さんは預金1000万円全額を貰いたいと思いますし,その方が公平ですね。
ただ,それで長男が良いと合意していれば問題ありませんが,長男がこれを認めなければ,法律的には,預金は亡くなった時点で分割されることになります。すると,預金の1000万円は500万円ずつに分けることになるので,1人はこの500万円だけ,もう1人は生前贈与分も合わせて1500万円ということになって,とても不公平になるのです。

当事者同士で合意が出来なかった場合,裁判をすることになりますが,この場合,まず家庭裁判所で調停,それでも合意できないと家庭裁判所が審判という形で判断をすることになります。
ただこれまでお話しした通り,合意ができない限り,預金については,遺産分割の対象にならないので,分割協議がまとまらないで調停や審判に持ち込まれても,現在のところ,どうしようもできません。

それが今回,どうやら預金の取り扱いが変わることになりそうということです。
この点が今,裁判で問題となっていて,最高裁判所で口頭弁論が開かれました。最高裁判所では,通常,従前どおりの判断をする場合には,口頭弁論など開きません。なので,最高裁は,「預金は遺産分割の対象外」というこれまでの判断を見直す可能性があるのではないか,と言われています。
この判決の内容によっては,今後の遺産分割手続に,大きな影響を与えるかも知れませんので注目したいと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇401回テーマ
 「預金を遺産分割の対象に?」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士