文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/400回テーマ 「過労死について考える」編

2016年11月15日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

本日は,最近報道でもよく取り上げられる「過労死」のお話をしてきました。
直近では,大手広告代理店の新人女子社員が去年12月に自殺した件が大きく取り上げられ,「過労による労災」と認定されました。お母さんは記者会見で「認定されても娘は戻らない。命より大切な仕事はありません。過労死を繰り返さないで」と訴えていらっしゃいました。

労働基準法では,労働者と協定すれば,残業させることができる…と定めていますが,上限時間は,一週間15時間,一カ月45時間,一年なら360時間が限度とされています。ただし,例外として,その時間を超えて残業が必要な特別な事情が予想される場合,予め労働者と協定をしておけば,OK,とされていて,その場合の上限はありません。そのため,残業代は基本的に1・25倍,さらに夜の10時を越えると1・5倍,それが月60時間を超えていれば1・75倍に跳ね上がります。残業は割高につくよ,と,間接的に,時間をセーブさせるような仕組みになっています。

また,長時間労働はうつ病などの原因の一つとなりうると医学的にも証明されています。
厚生労働省では,何時間以上残業していて,うつ病になったら労災を認めるといったふうに,認定基準を設けています。
例えば,月160時間以上の残業があった翌月にうつ病になった場合は,即労災が認められます。単月で160時間に満たなくても,120時間以上の残業が2カ月続いたり,100時間以上の残業が3カ月続いたりした翌月にうつ病になったようなときも,原則労災を認めます。もちろん,うつ病のような精神障害は長時間労働だけが理由とは限りませんので,例えば,月80時間程度の残業だったとしても,ちょうどその時期に,達成困難なノルマを背負わされたり,重要な案件を準備不足のまま丸投げされたりといったような重大なストレスがあってうつ病になれば,労災が認められる可能性があります。
そのため,原則,自殺は労災の対象とはなりませんが,こうした長時間労働や会社におけるストレスの結果,うつ病になって,それが引き金で自殺したような場合は労災として認められます。

会社におけるストレスを原因とした精神障害や自殺は社会的な関心が高まるところで,国も去年の12月からは,従業員50人以上の事業所を対象に,「ストレスチェック制度」を義務化しました。
これは,従業員全員にテストを受けさせ,その結果,ストレスが高いと判断された人は,会社に申し出れば医師の面接指導を受けることができます。
そこで医師が「業務の軽減を図った方がいい」と判断すると,会社はそれに従って業務の軽減をしなければいけないことになりました。
ただ,なかなか自分から会社に申し出るのは大変でしょう。出世競争の厳しい会社だと,そんなことほのめかしただけで,ドロップアウトしたとみなされてしまうこともあるかもしれません。そのため,会社側としても,申告しやすい雰囲気を作っていく必要があります。

責任感が強いあまりついつい残業時間が長くなって,自分でも気付かないうちに心身に障害をきたすという方もいらっしゃいます。そのため,周りが細やかにフォローしていかなければいけません。会社はもちろんですが,ご家族の力も重要になってくるところだと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇400回テーマ
 「過労死について考える」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士