文化放送『くにまるジャパン』に山田冬樹代表弁護士が出演/383回テーマ 「刑の一部執行猶予」編

2016年07月19日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

本日のくにまるジャパンでは,刑の一部執行猶予制度についてお話ししてきました。

先日,80年代に人気を博したロックグループのメンバーが覚せい剤取締法違反の罪に問われた事件の裁判があり,横浜地裁が出した判決は今年の6月から施行されている改正刑法の「刑の一部執行猶予制度」を適用して,懲役1年6カ月,うち懲役4カ月を保護観察付き執行猶予2年というものでした。

まず,「執行猶予制度」というのは,たとえば,懲役1年,執行猶予3年という判決が従来の形です。これは「今すぐ刑務所に行く必要はないが,3年以内に罪を犯し,有罪判決を受けたら,1年刑務所に行ってもらいます」というものですから,新たな犯罪で2年の懲役を受けたとしたら,最初の1年と合わせ,3年間,刑務所に行くことになります。

これに対し,「刑の一部執行猶予制度」というのは,先程の例でいえば,まず刑務所に1年2カ月。出てきてから保護観察を受けながら2年無事に過ごせば,残りの4カ月は刑務所に行かなくて済むということになります。
今までは懲役3年でも,3年刑務所行きか,全く行かずに済むか,二つに一つだったのが,3年のうち一定期間を刑務所行きという「第三の道」が生まれたことになります。

もちろん,全部の期間,執行猶予してくれた方がずっとありがたいです。刑務所に行く期間が長かろうが,短ろうが,行くか,行かないかで,大きな違いがあります。刑務所に行くからには,仕事をしている人は,辞めなければならないのが普通で,収入がなくなります。また家族と離れて暮らすことになり,アクリル板越しの面会が月に1回15分程度しかできません。手紙も最初は月1回です。もちろん電話もダメ。結局離婚に至る方も多いですし,家族以外の人間関係も同じように疎遠になってしまいます。
学校に通っている人は,行けなくなりますし,出所後も,履歴書に説明しにくい空白期間が出来てしまいます。

一部執行猶予判決が出るためには,前提として,以前実刑判決を受けたことがないか,受けていても刑期を終えてから5年を超えている場合に限られます。ただ例外的に,薬物の摂取や,その目的所持で捕まった人は,実刑判決から5年以内でも,保護観察を条件に一部執行猶予ができます。

なぜ薬物事件が例外かといえば,長く刑務所に入っていても,それに懲りて二度と手を染めない,というのは難しいからです。常習者でも刑務所ではいくらでも我慢できますが,外に出ると,誘惑に負けてしまうケースが多い。一般社会で,薬物を買おうと思えば買える環境の中でやめさせないと,意味がありません。そこで,こうした事件では,社会復帰後,薬物経験者が集まる自助グループに参加して,治してもらう。そしてちゃんと参加するように,一定期間「保護観察」の下に置いて,何かあれば刑務所というプレッシャーを与えるというわけです。

今回の事件は新制度の下で出た判決ということで注目されました。薬物事件の再犯防止には良い効果があると思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇383回テーマ
 「刑の一部執行猶予」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士