文化放送『くにまるジャパン』に山田冬樹代表弁護士が出演/381回テーマ 「同一労働・同一賃金」編

2016年07月05日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

本日のくにまるジャパンでは,「同一労働・同一賃金」についてお話ししてきました。

これは,パートや契約社員でも,仕事の内容が同じであれば,正社員と同じ賃金を払うべき,ということです。

先日,閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の中で,政府は,この「同一労働同一賃金」の実現に踏み込み,「我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ,躊躇なく法改正の準備を進める」と,はっきり謳っています。

ところで,現在でも労働契約法では,契約社員と正社員の間で,労働条件に差をつけた場合,それが「不合理と認められるものであってはならない」とされています。

雇用する会社の側は,例えば,同じ仕事をしていても,正社員は契約社員と違って,転勤や残業に応じる必要がある,といった形で責任の重さに違いをつけるようにしています。現在の法律では,仕事が同じでも,そうした違いがあれば,賃金に差があっても仕方ない,と決められているからです。
そのため,給料に差があるのは,違法だと争える場面と言うのは,現状では意外と少
ないのです。

ただ,最近,従業員100人ほどの運送会社で,定年後,契約社員として再雇用されたドライバーが,「定年前と全く同じ仕事なのに,正社員より給料が低くなったのは法律違反だ,これまでの給料の差額を支払え」と訴えた事件で,最近判決が出ました。そこではドライバー側の主張が認められて,会社は差額を支払うよう命じられました。

小さな会社だと,もともと転勤や異動の可能性も少ないですし,この裁判のようにドライバーであれば,仕事に差をつけるのも難しいため,こうした判決が出たようです。会社側は控訴しているので,最終的にどうなるかわかりませんが,こういう訴訟は今後,増えてくる可能性があると思います。

なお,パートの場合は,最近法律が改正されて,契約社員と同じ規定が置かれていますが,派遣社員の場合は「派遣先の従業員の賃金水準との均衡に配慮しなければならない」というように,あまり強い規制はされていないのが現状です。

現状では,週5日働いている人が,週3日勤務になると,給料は半分くらいに減らされてしまう会社が多いですが,「同一労働・同一賃金」が実行に移されると,給料は,半分ではなく,きっちり5分の3にしなさい,ということになるかもしれません。その場合,育児や介護に追われている人の場合,フルタイムからパートタイムに移ろうという人も増えてくるでしょう。また,パートとフルを行き来できる人事制度を作る会社も出てくるのではないか,と考えられています。

同一労働・同一賃金が実現すると,正社員の賃金が引き下げられるのでは,と心配する声も多いようですが,心配はないでしょう。会社が,一方的に賃金を引き下げることは認められていないからです。

ただ,新しい制度が,働き方にどう影響を与えるかは,法律の決め方によって違ってきます。不合理な差別を禁止するのではなく,先ほどの話のように「合理的な差別ならOK」とするのか,例外を認めるのか,といった制度のデザイン次第で,これからの「働き方」が決まってくるのだと思います

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇381回テーマ
 「同一労働・同一賃金」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士