文化放送『くにまるジャパン』に中原俊明代表弁護士が出演/373回テーマ 「父親の親権」編

2016年05月10日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

本日のくにまるジャパンでは,子どもを持つ夫婦が離婚した場合の「親権」についてお話をしてきました。

ニュースでも報じられていましたが,今年の3月,千葉の裁判所で,5年以上別居状態にあった夫婦の長女について,別居していた方の父親を親権者とする判決が出ました。

親権者といえば母親,というイメージが強いかと思います。実際に裁判でも,父親よりは,母親に認められることが圧倒的に多いです。これは,例えば子どもが乳幼児の場合で,母親が育児の大部分を担っていると,「母性優先の原則」というものが働くためですが,法律では,親権者(監護をすべき者)を決める時には,「子の利益をもっとも優先して考慮しなければならない」となっています。

具体的には,親側,子ども側,それぞれの事情を考慮するわけですが,たとえば親側は子育てに対する能力や意欲,住まいや教育環境,もちろん経済的事情も大切です。一方,子ども側では,どうしたいかという意向,年齢や性別,兄弟の有無と言った事情,また離婚前の生活環境への適応状況も考慮されます。なるべく環境を変えないことが重要で「監護の継続性の原則」と呼ばれる基準もあります。

報道によれば,この夫婦の場合,母親が長女を連れて父親に無断で家を出ていたそうで,その後,母親は,長女に会わせたり,電話で話すことを拒否するようになって,父親は5年近く娘と会っていなかったようです。

これまでの基準であれば,母親が親権者に指定されそうですが,以前もご紹介したことのある,「面会交流」に関する点が重要視されたようです。面会交流とは,子供を親権者ではない方の親に会わせる事ですが,今回の裁判では,面会交流の頻度について,母親側は,自分が親権を持った場合には,父親に認める面会交流の日数は「月1回」と提案していたのに対し,父親側は,自分が親権を持った場合には,「年間100回程度」の面会交流を実施すると提案していました。

裁判所は,父親が面会交流に寛容である点が重視し,「両親の愛情を受けて健全に成長するのを可能にするために,父親を親権者とするのが相当」と判断したようです。

「面会交流」のやり方は直接会うだけではありません。たとえば手紙や電話,メールなどで間接的に意思疎通や交流を行う方法も一般的です。また,子どもの写真や通知表などを送って,現在の状況を知らせるという方法も面会交流の一つの手段です。

ただ,面会交流が「子どもの利益ないし福祉」に反して行われることは許されません。子どもの意向や年齢,生活状況などを考えて,無理のない方法で行われることが望まれています。なお,当初決めたやり方をその後変更できないと言うことはありません。事情の変化によって,子どもの利益のために必要である,と認められる場合には,柔軟に変えていくことも必要ですので,そういった悩みを抱えている方もぜひご相談いただければと思います。


【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇373回テーマ
 「父親の親権」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 弁護士